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[突き落とし殺人]少年の父、苦しい胸中語る 

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 「自分の一言がきっかけになったかもしれないと考えると眠れない。本当に苦しい」。岡山市のJR岡山駅で男性客がホームから突き落とされ電車にはねられ死亡した事件から、4日で10日。殺人容疑で逮捕された少年(18)の父(56)が毎日新聞の取材に応じ、現在の胸の内を明かした。近所で「仲がいい」とうらやましがられていた父と息子。「何が正解だったのか」と自らの子育てを沈痛な表情で振り返った。

 父は3日夜、大阪市内の待ち合わせ場所に息子に買い与えたベージュの上着姿で現れた。父子は体形が似ており、服や下着を共有し同じ部屋で寝ていた。

 少年の家庭は両親と兄との4人家族。15歳上の兄は十数年前に関西地方の私大に進学。卒業後、家を離れ、母(56)は早朝夜間にパートに出ていたため、父は、日ごろ少年と接していたのは「僕が100%だった」と話す。

 父は兵庫県尼崎市で大工をしていたが、95年の阪神大震災で自宅が倒壊し、大阪府大東市に家族で転居。小学生の時、風呂で少年の体にあざがあるのを見つけ、その後、学校からいじめに遭っていると連絡があった。暴力以外にもゲームソフトを取られるなどし、「僕が守ってあげないといけないと思い、いじめていた子供の家に話をしに行ったこともあった」という。

 いじめは中学でも続いたが、高校では東大進学を希望するように。父は当時を振り返り、「目標をもって取り組んでいて、うれしかった」と語る。しかし、父は「金がないから、大学に行かせられない」と伝えるしかなかった。「借金してまで大学には行かない」。少年はそう答えたといい、今年2月に卒業式を終え、事件前日にはハローワークに行っていた。

 現在は接見禁止のため父親は事件後、少年とは会えず、弁護士を通じて様子を聞くだけだ。精神鑑定という言葉を報道で見た時には、「息子が(精神的に)まいってしまったのではないか」と、弁護士に尋ねた。「『普通の取り調べですよ』と言われて落ち着いた」と話す。

 少年が就職すると決めると、「頑張れ」と父は励ましてきた。父は事件後、勤めていた派遣先の会社を辞めた。警察の事情聴取や弁護士との打ち合わせの日々。「原因が分からない。今となっては自分があまり干渉せず、もっと自由に育てたら良かったのかと思うこともあります」と語り、「いつも一緒にいたのに変化が分からなかった」とつぶやいた。【石戸諭】

 【ことば】JR岡山駅突き落とし殺人事件

 3月25日午後11時5分ごろ、JR岡山駅の山陽線ホームで電車を待っていた岡山県職員、假谷(かりや)国明さん(38)が、大阪府大東市の少年(18)に背後から線路に突き落とされ、電車にはねられて死亡した。少年は殺人未遂容疑(殺人容疑に切り替え)で現行犯逮捕され、「刑務所に入りたかった。誰でもよかった」などと供述した。



毎日新聞 / 提供元一覧

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