くらし
2年間は緩和措置も 後期高齢者医療制度始まる
七十五歳以上を対象にした、医療保険「後期高齢者医療制度」が今月から始まった。国民健康保険(国保)やサラリーマンの健康保険組合(健保)などから高齢者だけを切り離したもので、兵庫県内の対象者は約五十八万人。初日早々に、福田康夫首相が「長寿医療制度」に改名を指示するなど、異例の滑り出しとなった新制度のポイントをまとめた。(溝田幸弘、鎌田倫子)
■対象と運営主体
対象となるのは(1)七十五歳以上の人全員(2)六十五-七十四歳で障害認定を受けた人。七十五歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた医療保険からこの制度に自動移行する。ただし(2)の人は障害認定申請を撤回し、国保や健保に戻ることもできる。
従来の医療保険と違うのは、世帯でなく個人単位での加入。「扶養」「被扶養」という考え方はなく、一人一人に保険証が配布され、保険料徴収の対象となる。県内の全市町が加入する広域連合が運営する。所得が同じなら、県内のどの市町でも同じ保険料が基本となる仕組みだ。
■保険料の算出法
保険料は、原則として全員一律の「均等割」額と所得に応じて増える「所得割」額の合計で決まる=表。
兵庫県の場合、均等割は年間四万三千九百二十四円。所得割は、収入額から控除額を引いて「総所得金額等」を算出し、そこから基礎控除額三十三万円を引いて、残った額に8・07%を掛けて決める。
保険料の上限は五十万円。兵庫県内の年間平均保険料は八万千四百円となっている。また、保険料を決める基準は二年ごとに見直され、少子高齢化が進む現状から、負担が増す可能性が高い。
支払いは原則として、二カ月に一度の年金支給日に天引きされる。ただし年金額が年十八万円未満の人や、後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計が年金受給額の半分以上になる人は、口座振替などで個別に納めることになる。
■軽減・減免・凍結
所得の低い人には、均等割が軽減される。総所得金額等が三十三万円を下回ると、均等割の額が七割減になる。
会社員の子どもに扶養されるなどして、これまで保険料を払っていなかった人には、緩和措置が講じられた。二年間は所得割を免除され、均等割も九月までの半年分は凍結。十月から二〇〇九年四月までは均等割の一割(二千百九十六円)を、その後一〇年四月までは五割(二万一千九百六十二円)を負担する。本来の保険料を支払うのは二年後になる。
災害に遭ったり、営んでいる店を畳んだりして収入が激減した人は、保険料が減免される場合がある。申請が必要なので、地元市町の担当窓口に相談を。
また「医療の確保が著しく難しい」「老人医療給付費がもともと低い」を理由に、兵庫県では豊岡市と、香美町の一部地域で均等割が減額されている。
■窓口負担
病院の窓口で支払う治療費は一割負担、現役並みの所得があれば三割負担だ。収入に応じて月ごとの上限額が設けられ、外来ならば月一万二千円、現役並み所得のある人は月四万四千四百円だ。
八月以降は世帯でなく個人単位の収入で判定するようになるため、窓口負担が増える人が出る。
例えば夫が七十五歳以上、妻が七十五歳未満の夫婦で、収入は夫が年金三百八十三万円以上、世帯収入が五百二十万円未満の場合。従来なら負担額は世帯収入で判定したから、窓口負担は夫婦ともに一割で済んだ。しかし八月以降、夫の窓口負担は夫の収入で決まるため、「現役並み」とみなされ三割負担が求められる。ただこうした場合についても緩和措置として、一〇年七月まで月ごとの負担上限額(外来一万二千円、入院四万四千四百円)が設けられている。
特別な事情なしに一年以上保険料を滞納すると、保険証を取り上げられ、「資格証明書」が交付される。こうなると、医療費をいったん全額支払う必要がある。
(4/4 11:58)
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