昨年、ある日系ブラジル人の母親から「どっちが親切なんでしょう」と聞かれた。日本とブラジルの学校についてだった。
日本の場合、小学校に入学すると、特別な事情がない限り、一緒に進級し、そろって卒業する。ブラジルでは小学校から落第や飛び級制度があり、一人一人がそれぞれのペースで進級していく。
母親いわく、「日本のシステムだと、小学校の勉強がちゃんと分からないまま卒業する子がいる。後で困るのは子どもなのに…」。学習の保障という観点では、ブラジルの学校の方がよほど親切ではないか。
総社市に六日、中四国、九州地方で初のブラジル人学校「エスコーラ・モモタロウ・オカヤマ」が開校する。幼稚園課程と小学校課程に十一人が入学予定で、週六日、母国語のポルトガル語で授業を受け、日本語も学習していく。
ブラジル人学校は国内に約百校あるが、京都以西にはなく、それを憂いていた日系ブラジル人の山中イシドーロさん(ブラジル在住)との交流から、NPO法人・ももたろう海外友好協会が生まれ、学校を運営する。
県内で最もブラジル人が多い総社市の小中学校などはブラジル人の子どもを積極的に受け入れている。しかし、中には不登校になる子どももいる。子どもが母国語を忘れることに不安を抱く保護者もいる。ブラジル人学校への期待は大きい。
今年は日本からブラジルへの移民百周年。岡山の新しい多文化共生の拠点としても注目される。