「コリャ〜 たまぶた! 目をみはる珍実験」
まぶたがたるんでいない学生に協力してもらい、まぶたに1グラムのおもりをつけて、擬似的にたるみまぶたを作りました。たった1グラムまぶたが重くなっただけで、学生たちは「疲れる」と言います。一体どうしてなのでしょう?
そこで、筋電図で、まぶたがたるんだ時に筋肉にどんな変化が起こるのか調べてみました。右目のまぶたにだけ1グラムのおもりをつけてたるませてみると、おもりをつけた途端に、額(ひたい)の右側の筋肉で強い緊張が始まりました。さらに驚くことに、首や肩でも、右側の筋肉だけが強く緊張し始めたのです。他の学生で調べても結果は同じでした。どうしてこんなにも大きな影響が出てしまったのでしょうか?
まぶたのたるみを検査
私たちは、日頃無意識のうちにまぶたを持ち上げています。ところが、実はまぶたがたるんだ人では、知らず知らずのうちにまぶたを持ち上げるために多くの労力を使っているのです。
まぶたを持ち上げることがいかに大変であるのかを実感するために、スタジオではテープを使った実験を行いました。これは、医療現場でまぶたのたるみを検査するために実際に行われている方法です。
- テープを4〜5センチの長さに切ります。
- 目をつぶった状態でテープの片側を眉毛の下のまぶたに止めます。
(この時、まぶた全体を持ち上げようとすると、テープを貼った後に目が閉じなくなってしまいます。眉毛のすぐ下の皮膚を止めて下さい)
- テープを引っ張り上げながら目を開き、テープのもう片方の端を額の皮膚に貼ります。
(強く引っ張りあげる必要はありません。皮膚を軽く持ち上げる程度で十分です)
テープでまぶたの皮膚を持ち上げることにより、額などの筋肉を使わずに目を開くことができます。
この状態で、首や肩などが軽くなった印象を受ける人は、まぶたのたるみが原因の肩こりがある可能性の高い人です。また、テープをはがしたときに、まぶたや首・肩が重くなった印象を受ける人たちも、まぶたのたるみによる症状が疑われます。
まぶたのたるみが頭痛・肩こり・腰痛を引き起こす理由
どうして、まぶたがたるむと、知らず知らずのうちに多くの労力が必要になるのでしょうか?
まぶたがたるむと、まぶたを持ち上げるための筋肉をより強く緊張させることになります。ところが、実はまぶたを持ち上げる筋肉には、頭部の筋肉と連動する仕組みが備わっています。そのため、まぶたを持ち上げる筋肉が強く緊張すると、反射により額の筋肉、頭の筋肉も連動して緊張するのです。
さらに、頭の筋肉の緊張が強いと、それを助けるために首から肩に掛けての筋肉まで緊張します。この状態が長く続くと、頚椎(けいつい)が湾曲し、首が前方に出て、猫背気味になります。このようにして、まぶたのたるみが、頭痛、肩こり、腰痛にまで影響してしまうのです。
不眠・慢性疲労・不安をもまねく理由
まぶたのたるみを放置しておくと、さらに深刻な症状を招くことがあります。
その鍵を握っているのが、まぶたを持ち上げる筋肉「ミュラー筋」です。ミュラー筋は、目を開いている時に働き、閉じている時には休みます。このミュラー筋の働きと連動しているのが、実は自律神経なのです。
ミュラー筋が働いている時、自律神経は“活動的”なONの状態です。ミュラー筋が休んでいる時、自律神経は“リラックス”のOFFの状態になります。
ところが、まぶたの皮膚がたるんでしまうと、ミュラー筋は目を開けておくためにはより強く働く必要があります。すると自律神経は、“活動的”なONの状態を通り過ぎて、緊急事態の“緊張”状態になってしまうのです。
さらに、眠ろうとして目を閉じても、上まぶたと下まぶたが合わさった時には、ミュラー筋はまだ働いているのです。自律神経は、ONの状態のままですから、これによって不眠の状態が起きるのです。
そして、自律神経がOFFにならない状態が続くと、慢性疲労や不安などの症状が起きてしまうのです。そのため、まぶたのたるみが原因で、生活に支障をきたすような場合は「眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)」という病気と診断され、保険適用の治療(手術)が行われます。
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