密輸象牙「2億円」焼却 「データの宝庫が」研究者嘆く2008年04月04日19時01分 大阪南港(大阪市)で06年に発覚した象牙密輸未遂事件で押収された過去最多のアフリカゾウ100頭分の象牙が3月、経済産業省によって一括して焼却されていたことがわかった。環境分野の研究者は「アフリカの気候変動などを示すデータの宝庫が失われた」と惜しみ、象牙取引業者は「2億円が灰になった」とため息をつく。
密輸未遂事件は06年8月に発覚。マレーシアから大阪南港に荷揚げされたコンテナから未加工の象牙約200本や印材1万8千本など計2.8トンが発見されて押収。07年2月、荷受人だった男らが関税法違反(無許可輸入未遂)の疑いで大阪府警に逮捕され、男は同年7月、執行猶予付き有罪判決を受けた。経済産業省によると、象牙は裁判の証拠品として大阪地検が保管していたが、今年3月26日に同省が引き取り、同日中に大阪府内の処分場に運んで破壊し、焼却したという。 象牙はワシントン条約で商取引が禁止されており、密輸象牙に関しては、04年の締約国会議の決議で原産国が特定できなければ原則、焼却処分することを定めた。 同省貿易審査課は「スイス・ジュネーブの同条約事務局にも事前に報告したが『日本の方針を支持する』という回答があった」と話す。 同条約の決議では、研究用として学術研究機関に提供することも認められており、今回は九州大学大学院からの申し出で、5本の象牙の貸し出し(2年更新)が認められ、焼却を免れた。同大学院の小池裕子教授(保全遺伝学)は「象牙の断面の年輪からゾウの生育状態がわかり、干ばつ状況などアフリカ大陸の気候変動も知ることができる。世界的に環境問題への関心が高まるなか、データの宝庫の大半が失われる前に十分に研究しておきたかった」と話す。 象牙は印鑑や工芸品の素材として人気が高く、最近の取引価格は1キロ7万〜8万円とされるため、焼却された象牙の総額は約2億円に上る。 国内在庫の枯渇で、全国の骨董品(こっとうひん)愛好家らからの仕入れに奔走する東京都の取引業者は「密輸品を市場に出せば密輸を容認したように受け止められかねないという国の姿勢はわかるが、思いは複雑。どうしても、もったいないと思ってしまう」と話す。 ◇ 〈象牙密輸未遂事件〉 06年8月、マレーシアから大阪南港に荷揚げされたコンテナ内から象牙約200本(2.4トン)と印材1万8千本(0.4トン)が発見され、大阪税関が押収した。大阪府警は07年2月、荷受人だった遊技機リサイクル会社社長の男らを関税法違反(無許可輸入未遂)容疑で逮捕。男は大阪地裁で同年7月、懲役1年執行猶予3年、罰金80万円の有罪判決を受け、刑が確定した。また、府警は男に密輸を持ちかけたとして韓国籍の男2人を同法違反容疑で国際手配している。 PR情報この記事の関連情報社会
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