「ここでもいつ起きるか分からない」。タクシー運転手刺殺事件で米兵が逮捕されたのを受け、神奈川県横須賀市と同様に米軍基地と隣り合わせで暮らす各地の住民からは三日、不安や怒りの声が上がった。
女子中学生暴行事件を契機に、米兵による事件に対する抗議集会が先月開かれた沖縄。実行委員長を務めた那覇市の玉寄哲永さん(73)は「遺族が悲しみに暮れる中、米兵の身柄は米側の『好意的考慮』で引き渡される。あまりに非常識で、日米地位協定を抜本改正する必要性を再確認した」と怒りをあらわにした。
米軍基地内での営業が認められている「ベースタクシー」が約八十台加盟する沖縄中部個人タクシー事業協同組合の喜納政吉理事長は「沖縄で起きたら大変な事件。米兵を乗せる時は気を付けるよう呼び掛けている」という。
岩国基地への米空母艦載機移転の是非を争点とした市長選が二月に行われた山口県岩国市。移転反対を打ち出し落選した井原勝介前市長(57)は「事件のたびに米軍は綱紀粛正というが、特殊な環境にある米兵の犯罪を抑えるには限界がある。事件は基地を抱える街の共通の痛みだ」と指摘。
「広島、沖縄と米兵による犯罪が立て続けに起きた。基地を抱える街の住民は安心して暮らせない」。市民団体「米兵の犯罪を許さない岩国市民の会」の大川清代表(49)も不安気に話した。
青森県にある三沢基地付近の商店街で靴屋を経営している高松照子さん(81)は「三沢でも米兵による軽傷ひき逃げ事件や元米兵による殺人などが相次いでいる。ニュースを見て腹が立った」。
三沢基地周辺町内連合会の黒田進二副会長(72)は「三沢でもいつ起きるか分からず、冷静でいられない。地位協定の見直しがなければ、基地と住民との長期的な共存共栄は望めないのではないか」と訴えた。
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