自分のカルテを見ることができると聞いていますが、実際にカルテの請求はスムーズにいくのでしょうか。カルテの開示請求に当たっての必要なことを教えてください。
日本では長い間、カルテ(診療録)は医師の記録で、患者が見ることはできませんでした。治療するのは医療者であるから患者は見る必要もないし、言われたとおりにしていればいいという考えがまかり通っていました。しかし、10年前の厚生労働省の検討会で審議され、2004(平成16)年に個人情報保護法が施行されたことから、現在では開示となっています。
個人情報保護法には、個人情報(個人を特定する情報)を開示、訂正、削除する権利が盛り込まれ、当然のことにカルテもその対象になっています。
自分の病気に対し、診断や受けた治療、投薬された薬など診断時に説明を受けても、すべてがきちんと理解できないこともありますので、カルテのコピーをもらってじっくり読めば、理解を深めることにもなります。
カルテ開示請求は、医師が書いた診療録のほかに、手術記録、看護記録、X線写真、紹介状、検体、処方箋や調剤録など、医療機関が保管しているすべての診療記録が対象になります。また、映像や、音声による情報も含まれます。つまり、客観的なデータだけでなく、医師が行った判断、評価も含まれています。
開示方法は、基本的にはカルテのコピーを貰うことやカルテの閲覧です。
カルテ開示を請求するのは原則的には本人ですが、同意を得ていれば家族や委任を受けた代理人でも請求できます。未成年の場合は、親や代理人になりますが、とくに15歳以上の未成年者で合理的判断ができる場合は、疾病の内容によっては本人から開示請求できます。また、個人情報保護法では死者の情報は対象外ですが、もし、家族が開示請求を望んだ場合、開示については医療機関の努力規定となっていますので、患者の配偶者、子、父母、これに準ずる人(代理人を含む)は請求できます。
どこの医療機関でも請求できるかについては、法律が適用されるのは基本的に5001人以上のカルテがある医療機関ですが、厚生労働省は小規模な医療機関や介護施設などにおいても開示請求に応じるよう求めています。
請求する場合、基本的には医療機関にある申し出用の書面で申し出ます。窓口でもらい、必要事項を記入して提出しますが、このとき、本人確認のため、免許証などの提出を求められるでしょう。開示請求の理由はとくに必要ありません。
開示に関しての費用は、医療機関で実費程度の費用を設定していますので、手数料、コピー代などの支払いが必要です。「カルテを開示してもらえるのか」「開示請求後すぐに見ることができると思っていた」「有料とは思わなかった」など、患者からの質問が医療安全センター(医療に関する相談機関で各県に設置)に届くようですが、閲覧は申請から1~2週間かかりますし、実費が必要です。
医師と協同で病気を治すためには、カルテの内容を理解することが必要な場合もありますので、大きく変わってきた医療システムを有効に利用していきたいものですね。
回答者・坂本 憲枝(消費生活アドバイザー/医療グループASCA[アスカ]代表)(「毎日らいふ」2008年4月号より)
2008年3月27日