昨年4月から福井社会保険病院(勝山市)が分娩(ぶんべん)業務を中止したため、お産ができる病院が無くなった奧越地域。福井大学医学部付属病院(永平寺町)との連携で活路を見いだしたが、県内では他にも産科の減少で対応に悲鳴を上げている病院もある。【菅沼舞】
越前市の笠原病院(村井アトム院長)は今年2月、分娩業務を休止した。新生児を診察する常勤の小児科医が昨年独立開業したのを受け、同大の付属病院から派遣されていた常勤の産婦人科医が「連携がおろそかになる」として引き揚げたため、産科が廃止に追い込まれた。
県内で分娩業務を行っている病院・診療所は、3月現在で22カ所(奥越0、福井・坂井13、丹南5、嶺南4)となった。
産科・小児科専門の福井市にある福井愛育病院(石原義紀院長)は、常勤の産科医5人でローテーションを組み、年間約1200件(医師1人あたり年間240件)の分娩を引き受ける。医師数に対し過剰だといい、鈴木秀文産婦人科部長は「理想は医師1人あたり年間160件から200件」と話す。
日本産科婦人科学会の調査で、福井愛育病院と福井社会保険病院が産科医の緊急派遣が必要な医療機関に挙げられた。
福井社会保険病院(河北公孝院長)は現在、常勤医師1人が妊婦検診のみを行っている。同病院は産科再開に向けて行政や大学病院に働きかけているが、常勤医師が最低3人必要で、再開のめどは立っていないという。
一方で、同学会福井地方部会は「医療機関同士の連携はスムーズで、何の問題もない」と話し、県内でのお産事情の受け皿を心配していない。
同学会福井地方部会長を務める福井大学医学部付属病院の小辻文和・産科婦人科長は「福井県は全国平均より産科医数が多い。奥越には分娩業務を行う医療機関はないが、付属病院との連携がスムーズで、問題はない」と話す。
県の保健医療計画を決める部会でも「通常分娩は開業医が十分に対応しており、ハイリスクの分娩時には周産期母子医療センター(県立病院)や支援医療機関が連携して対応している」との報告がなされている。
毎日新聞 2008年4月4日 地方版