サブプライムローン問題に端を発し、昨年より投資環境が大きく悪化しています。しかしそれまでの2〜3年間は、海外の高景気を背景に、高金利の「グローバルソブリン債」などの外債投資や、株価が大きく上昇する「BRICs」など新興国株への投資が個人投資家の間で盛んに行われていました。
こうしたリターンの高い投資環境の中では、大きなリターンに見合う大きなリスクがあることを頭の中で理解はしつつ、目の前の大きなリターンに目を奪われ、手持ち資金の多くを投資につぎ込んでいく傾向もありました。
しかし、昨年来、国内や海外の株式相場は2割から4割も大きく値下がりし、ドル安で為替も2割ほど円高になってしまいました。そのため、手持ちの投資商品が大きく値下がりし、この先どのように対応したらよいのか迷っている個人投資家が多くいます。
対応の判断を迷う理由は、「今の時点で売却をすると実損が発生するので、損をしたくない。このまま持ち続けていればいつかは元に戻るのではないだろうか」という期待。一方「このまま持ち続けていると、さらに値下がりして取り返しのつかない事になりはしないだろうか」という不安です。
では、このように投資環境が悪化している時に、個人投資家はどのように対応するのがよいのか考えてみましょう。
基本的なスタンス
投資は本来余裕資金で行うものです。したがって余裕資金の範囲内であれば、長期運用を目差し、目先の投資環境であまり右往左往しないのが基本的なスタンスです。しかし、余裕資金だけでなく、本来は投資すべきではない目的資金まで投資している場合には、目的資金に支障をきたさないように、投資を見直す(リバランス)ことが必要になってきます。
また、相場の変動が大きい場合には、将来の値上がりに期待するだけでなく、値下がりに対しても対策を打つ必要があります。具体的には次のような対策があります。
対策1:目的資金を確保するために売却する
投資している資金が、例えば、3年後や5年後に使う予定の家のリフォーム資金や子どもの結婚資金援助資金などの目的資金は、このまま相場にさらしておくと、相場のさらなる悪化によっては目的を果たせなくなる恐れがあります。したがってこのまま保有しておくことは避けたいものです。この際、損切りをしてでも売却をして、安全運用の預金や国債などにシフトすることが望ましいと言えます。残りの投資分はしばらく使う予定のない資金なのでこのまま保有し、今後の値上がりに期待するという考え方です。
対策2:目的資金は確保済みなので、保有を継続
投資している資金はすべて余裕資金で当分は使う予定がない場合には、基本的には保有を継続して今後の値上がりに期待するのが本来の投資スタンスと考えます。しかし、保有を継続する場合にもさらに二つの対策があります。
(1)ポートフォリオをリバランスしない方法
今の時点で投資商品を売却すると実損が発生します。いずれ値上がりするかもしれないし、売却したところで他に期待できる投資商品があるわけではないので、このままの状態でしばらく塩漬けにしたいと考える個人投資家は意外と多いものです。つまりポートフォリオを変えずにこのまま長期運用のスタンスで将来に期待する方法です。この方法は、基本的な投資スタンスに沿った方法といえます。
(2)ポートフォリオをリバランスして縮小する方法
リバランスしないでこのまま持ち続けていれば、長期的には価格が回復すると思われるが、でも、今後さらに値下がりしないとは言えないと考えた場合、今後の値上がりにも、また、値下がりにも備える方法があります。
現在の投資商品の中で、今後さらに値下がりの可能性がありそうな商品の一部を売却して、安全運用にシフトします。シフトにより、今後相場が下落してもリスクを抑える役目もあるし、相場の下落時に投資商品を追加購入して、将来の値上がり益を大きくすることもできます。シフトしない投資資金は縮小されますが、そのまま投資しておくことで将来の値上がりを期待できます。
自分に合った対策を取るために、もう一度、今後のライフプランに基づく資金使途と金融資産全体を確認するようにしましょう。