広島や山口の中国残留孤児が早期帰国や帰国後の生活支援が不十分だったなどとして国を訴えた中国残留孤児広島訴訟は31日、原告・弁護団が訴えを取り下げて終結した。原告らは訴訟が終わったことへの安堵(あんど)と共に、03年9月に提訴した4年半に及ぶ訴訟の苦労をねぎらい合った。
広島弁護団の我妻正規事務局長は、記者会見で訴えの取り下げを発表し、原告らについて「(日本語が十分に話せず)5年前に出会った時はおどおどして不安そうだった」と振り返り、「一つの目的で結集し、街頭宣伝などで『オネガイシマス』と呼びかけたり、いろんな人と出会っていく中で社会性が回復された」と話した。一方、「国の責任を明確にできなかったのは忸怩(じくじ)たる思いだ」と、2世、3世の問題などが未解決になっていることを指摘した。
原告団長の中山文林さん(62)=中区=は「ついに政府を動かすことができ、裁判を起こしたのが間違いじゃなかったことが分かった」と喜んだ。新制度の施行については「これまでの苦難などを認めてくれた」と声を大きくした。訴訟取り下げについて「裁判を通じ、日本人の生活を送れるようにたくさんの人と親しくなったので、名残惜しい気もする」と照れながら、日本社会にとけ込もうとするきっかけになったことも紹介した。また、今後も支援策のより良い改正を目指して活動を続けていくことを誓った。【井上梢】
毎日新聞 2008年4月1日 地方版