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取り調べ可視化:重大事件、警察も録音・録画 任意の自白、証明--今夏試行

 警察庁は3日、警察の取り調べの一部録音・録画を、警視庁や大阪府警など大規模な警察本部で今夏にも試行することを決めた。警察庁は「真相究明の支障になる」ことなどを理由に取り調べの録音・録画に慎重な立場をとってきたが、来春始まる裁判員制度に向け、被告の自白が強制されたものでないという任意性を立証するためにも試行が必要と判断した。【遠山和彦】

 録音・録画を試行するのは、裁判員制度の対象となる殺人などの重大事件で、容疑者が自白し、将来の公判で自白の任意性に争いが生じるおそれのある場合から選定する。具体的には警察本部長、署長、警察庁が協議して決める。

 容疑者が自白して捜査が一定程度進展した時点で、取調官が供述調書を作成する際、調書の内容を容疑者に読み聞かせて内容に間違いがないかを確認する状況をビデオカメラで録音・録画する。20分程度の録音・録画を想定している。容疑者が拒否した場合は行わない。

 録音・録画の状況はDVDに記録し、必要に応じ公判に証拠として提出する。検察庁は06年から一部録音・録画を試行しており、試行の細部はこれまでの検察庁の試行状況を参考に決定する。また、捜査に与える影響など課題を検証する。

 日本弁護士連合会などは取り調べ全過程の録音・録画を求めているが、「取り調べの機能を損ない、犯罪検挙に支障がある」として録音・録画は一部にとどめた。暴力団など組織犯罪の取り調べも捜査への支障が大きいとして対象から外した。

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 ■解説

 ◇捜査の現場に重い負担

 取り調べの録音・録画には、容疑者の自白が取調官に無理に強いられたものでないという供述の任意性を証明することと、取調官が密室で不法な取り調べをしないように監視する目的がある。

 一部録音・録画は06年から検察庁で試行が始まった。任意性立証に効果があると判断され、今月からは裁判員制度の対象となるすべての重大事件で原則実施する。

 しかし、警察は通常、検察より先に事件の容疑者を発見、取り調べにあたる。時には容疑者の身の上話から説き起こし、供述を引き出すことが求められ、起訴権限を持つ検察の取り調べとは大きく異なる。

 現状では、容疑者の自白の大半は警察の取り調べ段階で得られており、警察での一部録音・録画は検察での実施より重い負担を捜査現場に課すことにもなる。現場からは「容疑者との信頼関係が築きにくくなる」という声も上がっている。

 試行方針は決めたが、警察庁は「捜査現場への具体的な説明はこれから」としており、十分な説明と、意見聴取が必要になる。新たな取り組みで、自白が得にくくなるなどの影響があっては改革が本末転倒になりかねない。【遠山和彦】

毎日新聞 2008年4月3日 東京夕刊

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