妊婦モバイル健診着々 産婦人科医不在対策

第1子誕生の報告で遠野市助産院を訪れた佐藤さん(右)と助産師の菊池さん(中央)=3月25日、遠野市松崎町
 岩手県遠野市が、昨年12月に開設した市助産院「ねっと・ゆりかご」で、IT(情報技術)を活用した遠隔妊婦健診の受診が順調に推移している。これまでに、妊婦21人が延べ40回利用。6年前から産婦人科医が不在の同市で、妊婦たちの安心と健診を支えている。国や岩手県は、出産環境の向上策を目指す上で「遠野モデル」を参考にしたシステムづくりを検討している。

 同助産院のシステムは、携帯電話やパソコンを使って市外9つの病院と連携。開設から4カ月の利用実績は、県立釜石病院と事前連携した昨年4―11月の17人を既に上回った。利用した21人のうち16人が釜石、盛岡、花巻各市の連携病院で出産した。

 「ねっと・ゆりかご」の助産師、菊池幸枝さん(39)は「陣痛開始後の妊婦の病院側の受け入れも、スムーズに進んでいる」と話す。4月からは助産師が1人増えて2人となった。

 お産直前の診察も、12回と事前連携の期間に比べ倍近くに増えた。遠野に帰省して遠隔健診を受け、2月に盛岡市内で第一子を出産した佐藤郷美さん(28)=埼玉県=は「助産院のおかげで冬道を盛岡まで通う回数が減り、助かった」と感謝する。

 遠野市が、複数の病院と連携できた背景には助産院が「公設公営」方式だったことがある。市によると、年間約200人の妊婦の健診を助産院でほぼサポートできるようになったという。

 今後は利用増に伴い、医師との十分な連携を持続できるかが懸念材料の1つだ。岩手県産婦人科医会の小林高会長は「医師のIT習熟に加え、妊婦がどの病院に通っても連携できる情報システムが必要」と課題を指摘する。

 遠隔健診の「遠野モデル」を評価する県は、経済産業省と連携し妊婦情報を電子化する独自システムの検討を開始した。国も、3月から本田敏秋市長をメンバーに遠隔医療懇談会を設けた。

 本田市長は「現状では助産師のマンパワーの位置付けや医療機器の向上など課題は多い。『遠野モデル』を通じて遠隔医療の在り方に一石を投じたい」と話している。

[遠野市助産院の遠隔妊婦健診] 常勤の助産師が健診を行い、胎児の心拍数などを携帯電話やパソコンを使って市外9つの病院に報告、指示を仰ぐシステム。出産は扱わないが、40キロ以上離れた連携病院に通う妊婦の負担が軽くなる。
2008年04月03日木曜日

岩手

社会



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