世界で初めて実用化された波浪推進船「SUNTORYマーメイド☆号」で、海洋冒険家堀江謙一さんが米国・ハワイから日本に向けて航海中だ。波の力を動力にするという斬新な発想の船。昨年六月に福山市内で進水し、初めての夢の航海。到着が楽しみだ。
船は長さ九・五メートル、重さ三トンのアルミ船。堀江さんのウェブサイトの航海日誌によると、アホウドリが休憩に来たり、シイラらしい大魚が近づいてくるという。日本語ラジオ放送を聞きながら、順調な航海のようだ。
波浪推進船については昨年、本紙でも何度か紹介したが、船体前方にある二枚の水中翼が、波に合わせてイルカの尾びれのように上下に動き、前進力を生み出す。ヨット設計者や大学教授、大手企業が開発にかかわり、福山市沼隈町常石の造船会社で建造された。
この船が注目されるのは、化石燃料による地球温暖化が進む中で、波力で進む技術が新時代を切り開く可能性があるからだ。太陽電池も使い、環境に配慮している。
造船所の開発チームの責任者によると、船底曲面の複雑な形状など驚きの連続で、建造も難度が高かったそうだ。「波だけで動いた時には感激もひとしおだった」と話していた。
航海は六千―七千キロ。速さは三ノット(時速五・六キロ)前後。五月下旬の紀伊水道到着を目指しているが、六月に入るかもしれない。ヨットで単独無寄港世界一周などを達成している堀江さん。航海の成功はもちろん、新技術が世界にアピールできることを期待したい。 (福山支社・柏原康弘)
(注)☆はローマ数字の2