日本経済にかすみがかかってきた。日銀が発表した三月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、代表的な指数である大企業製造業でプラス一一と、昨年十二月の前回調査に比べて八ポイントの大幅下落となった。
二〇〇三年十二月調査(プラス七)以来、四年三カ月ぶりの低い水準だ。三カ月後の景況感もプラス七にとどまっており、設備投資にも陰りが見え始めた。景気の先行きに対する警戒感が一段と強まっている。
DIは、業況が「良い」と答えた企業から「悪い」とした企業の割合を差し引いた数値だ。大企業は自動車、ハイテク、鉄鋼など主要製造業の景況感が大きく悪化し、非製造業も四ポイント低下のプラス一二と落ち込んだ。
中小企業は、製造業が八ポイント低下のマイナス六と、四年ぶりにマイナスに転じた。非製造業も三ポイント低下してマイナス一五となった。地場企業のDIも、岡山が二期連続で下がり、三年ぶりのマイナスになるなど厳しい見方をしている。
景気をけん引してきたのは輸出産業だ。しかし、主要相手先の米国の景気が、サブプライム住宅ローン問題で冷え込んでおり、これに急激な円高と原油高騰などが追い打ちをかけた。中国、ロシアなど新興国向けの輸出は堅調に推移しているが、米国の景気が失速すれば、新興国の成長にもブレーキがかかりかねない。
輸出依存から内需拡大への転換が急務とされながら、個人消費などの伸びは期待できそうもない。福田康夫首相自らが要請した春闘での賃上げは軒並み前年並みにとどまった。電力、ガスなどの公共料金や牛乳、食用油といった生活必需品の値上げも相次いでおり、家計が逼迫(ひっぱく)するのは必至だろう。
政府も、三月の月例経済報告で景気の踊り場入りを認め、新たな成長戦略を打ち出そうとしている。しかし、金融政策のかじを取る日銀総裁はいまだに空席のままで、期限切れとなった揮発油税など道路特定財源の暫定税率をめぐって与野党のにらみ合いが続いている。
暫定税率維持などを盛り込んだ税制改正法案の参院での審議入りが二日から四日にずれ込んだ。正式に決まっていた本会議が先送りされたのは異例だ。政治は機能していないと言わざるを得まい。
先行き不安な空気を払うために有効な政策を打ち出すのは政治の役割だ。政局がらみの混迷から一刻も早く脱出し、景気が後退局面に入る前に、目の前のかすみを晴らさねばならない。
岡山県内の大半のタクシーが今月から禁煙になった。たばこを吸う人にとっては不便になるが、公共的な場所の禁煙は時代の流れだろう。喫煙者との間でトラブルが起きないよう、適切な運用が求められる。
二〇〇三年に施行された健康増進法などに対応した措置である。他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の防止努力義務が課せられ、病院や職場、列車など多数の人が利用する施設などでの禁煙・分煙化が進む。
禁煙タクシーは〇六年に大分市を皮切りに導入され、全国的に拡大している。都道府県単位では岡山は十八番目で、中国地方初という。香川は三月一日から始めた。
岡山ではドアなどに禁煙シールを張り、乗客に告知する。たばこを吸わない人が増え、禁煙タクシーはおおむね歓迎されているようだ。
懸念されるのは、喫煙をめぐるトラブルである。一度にたくさんの人が利用する列車やバスと違い、タクシーは個人的な空間で迷惑はかけないと喫煙者は思いがちだ。だが、車内に残ったたばこのにおいで気分が悪くなったり、においが服や髪につくのを嫌う人は多い。
「どうしても」という人は、備え付けの携帯灰皿を使い停車して車外で吸うようになる。ただ告知シールを見落とすなどして混乱が起きる可能性がある。乗車の際に運転手が禁煙タクシーであることを明確に言葉で伝えるなど、告知を徹底する必要がある。車内で吸いたい人は事前確認を心掛けたい。
ニコチン依存症は病気といわれる。喫煙者にとって、たばこをやめるいい機会になるととらえてはどうだろう。他人への悪影響だけでなく自らの健康のためにも、より前向きな禁煙努力が欠かせない。
(2008年4月3日掲載)