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女子高生に「治療バイト」やらせ、診療報酬を不正請求

2008年04月04日03時03分

 健康な女子高生らにアルバイト代を払って治療を繰り返し、診療報酬を不正に請求したとして東京社会保険事務局は3日、中板橋耳鼻咽喉(いんこう)科(東京都板橋区)の保健医療機関の指定と乾忠夫院長(72)の保険医登録を10日付で取り消すことを決めた。

 厚生労働省によると、必要のない治療で診療報酬を不正請求する手口は極めて異例。

 同事務局によると、乾院長は05年1月〜07年10月、来院した健康な女子高生ら少なくとも20人に不必要な診療や投薬などを行い、約190万円の診療報酬を不正に請求していた。

 乾院長はアルバイト名目で女子高生らを集め、1回の通院につき5千円を渡す一方、約1万5千円を診療報酬として請求。安いシロップや塗り薬で診療し、1万円程度の利益を得ていた。

 診療する際、本人に自覚症状がなくても症状があるように言わせたり、全く診療行為をしなかったりするケースもあったという。このほか、過去に来院した患者にその後も診療を続けたように装う手口で約29万円の架空請求をしていたとされる。

 乾院長は「うちの評判を広めてもらうバイト代のつもりで患者に金を渡したのがきっかけで、バイト代を求める女子高生が押し寄せるようになった」と金銭の授受を認める一方で、「症状を訴えれば診ないわけにはいかない。症状があると言わせた覚えもない」と不正請求は否認。処分の取り消しを求めるという。

■「バイト、100回通った」

 「耳鼻科に行って簡単な診療を受ければ5千円がもらえる」。約2年前から東京都内の繁華街に集まる女子高生の間で、こんなうわさが口コミで広まっていた。それが乾医師の医院だったという。

 「アルバイト」をしていた女性(19)は友人の紹介で、高校3年になる直前の06年春から卒業後の昨年9月まで通院した、と打ち明ける。3分ほど鼻から「何か」を吸入するなどされると、「バイト代」として5千円がもらえたため、自分で計100回以上通ったうえに、「バイト」として友達約40人も連れて行ったという。

 しばらくすると、なぜか乾医師から「悪いところがあるから来たんだよね」と念を押されるようになったが、女性は「『うん』とうなずいたけど、どこか悪くて行ったことはない。他のバイトをしていなかったからお金は助かった」。さらに乾医師から「優しくていい病院」という評判を喫茶店などで流してほしいと頼まれたが、「それはしなかった」という。

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