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日本を語る
信じられる国家社会を目指して

前文部科学大臣政務官・参議院議員
ありむら はるこ
有村治子氏に聞く  公式HPhttp://www.arimura.tv/

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※『日本の息吹』19年5月号より。お申し込みはこちらから

●プロフィール
有村治子(ありむらはるこ)
昭和45年生まれ。滋賀県出身。ルーツは鹿児島で幕末の桜田門外の変の有村兄弟の家系を継ぐ。国際基督教大学卒業。米国SIT大学院修士課程修了。平成13年参議院選挙にて初当選。「教育は国民性を創る礎」との信念のもと文部科学大臣政務官として教育基本法改正に取り組む。


●領土問題について教科書記述の是正を実現

― 教育、家族支援、外交・防衛の三つを柱に活動されておられますね。

有村◆地方分権が進んでも、国家がリーターシップをとり最終責任をおうべき根本的な問題に取り組んでいきたい。しっかりとした国家観、地に足のついた生活観で、保守層の掘り起こしをしたいと思っています。

― 領土問題では教科書記述の是正を実現されました。

有村◆二月七日の北方領土返還要求全国大会には毎年出席しておりますが、平成十七年の大会で、ビザ無し交流で北方領土に行った沖縄の女子中学生の発表がありました。「北方領土の重要性を初めて知ったけれども、教科書にはほとんど記述がない」とのことでした。そこで小中高の社会科の教科書を手当たり次第五十四冊調査したところ、「第二次世界大戦末期にソ連が占領」と書いた教科書が二冊ありました。これでは戦争の結果ソ連が合法的に北方領土を得たと受け取られかねない。史実は、第二次世界大戦後の昭和二十年八月二十八日から九月五日に武装したソ連兵が不法占拠してそのまま居座ったというもの。この点を国会質疑で糺したところ、全国から大変な反響がありました。「北方領土というと右翼のスローガンと思っていたが、そうじゃないということが初めて分かった」という人や、「領土問題を子供たちに教えることがいかに大切かが分かった」という社会科の現職の先生からの感想もいただきました。
 この質問がきっかけとなって、学習指導要領に北方領土、竹島、尖閣諸島が我が国固有の領土であることについて正しく教えるよう明記されることとなりました。

●主権の大切さを訴える

 独立国家の要件は国民、領土、主権の三つと言われていますが、私は、主権の大切さということをもっと伝えていかないと領土の概念は出てこないのではないかと最近強く思うようになりました。
 主権とは、自分たちで自分たち自身の国のあり方を決められる権利です。それがいかに尊いことか。例えば、日本の選手がオリンピックで金メダルを取ると、日本の国旗を掲げ、国歌を演奏し、選手とその祖国の栄誉が讃えられます。ところが、アテネ五輪でテコンドーの金メダルを取った台湾の選手の場合、表彰式で掲げられたのは五輪旗であり、演奏されたのは五輪の歌でした。人口十万の小国でも主権が認められているのに、人口二千四百万人の台湾は対外的な主権を認められていません。
 どの国も主権侵害については敏感に対応しています。拉致問題はその最たるものですが、北方領土における日本漁船拿捕事件なども「主権侵害」の外交問題として対応していかなければなりません。外国から侮られないこと。私達の生存可能性を高める上で重要です。

●國神社に勇気をいただく

― 有村さんの國神社に対する想いも格別ですね。

有村◆かつて國神社の社報に書かせていただきましたが(『國』平成十八年五月号「國に勇気をいただいて」)、前回の選挙への出馬前、極度のプレッシャーのもと心身共に疲れ果てていた私を主人が國神社に連れて行ってくれました。そしてこう語りかけてくれたのです。「ここにいらっしゃる英霊は、自分がやられたら自分の命ばかりか、愛する両親、奥さんや子供、あるいは奥さんのお腹の中にいるまだ顔も見たこともない赤ちゃんの命まで危険に晒さなきゃいけない、そんなプレッシャーの中で、魂を奮い立たせて、第一線に赴かれたんだよ」と。その先人たちの戦いを思えば平和な時代の選挙戦くらいでへこたれてはいけないと諭してくれたのです。
 その社報の私の文章に対する反響も全国的にありました。これを読んで初めて國神社にお参りに行きましたというある地方自治体の首長さんもおられました。私は軽々しく「國問題」というべきではないと思っています。國神社は政治問題の場ではない。どのような立場の人であっても御霊と静かに向き合う場なのです。

●お母さんの陣痛記念日

― この五十年間で、現職として出産を経験された三人目の国会議員でもあられます。
有村◆妊娠、出産を経験して実感したことは、自分の誕生日とは、お母さんの陣痛記念日だということです。お母さんがつらい陣痛を何度も経験し、ときには生命の危険にさえ晒されながらも新しい命をこの世に届けた日なのです。しかもその命は、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんと遡っていくと実におびただしい命の連鎖によっている。その中の誰一人欠けても自分という存在はない。そんな先祖、先人たちがわが子孫に幸多かれと必死になってつないでくれた命のたすきを受け取って、その命のリレーの中間走者として走っているのが今の私達なのです。
 そこで、新しい命を育もうとする妊婦さんに優しい社会づくりを目指して、全国統一のマタニティマークを作るべきだと首相官邸で提案し、昨年これが実現しました。このマークをとりわけ、まだお腹も目に見えて大きくなっていないけれども心身共に一番つらい妊娠初期の妊婦さんにつけて頂いて、妊婦さんに優しい社会にしていきたいと思っています。

●教育の使命とは

― これから目指されることは?

有村◆信じられる社会を作りたい。生涯の買い物であるマンションの耐震偽装、子供が口にするお菓子の賞味期限切れ、国民に大きな影響力を持つ健康番組の捏造など本来信じられるべきものが信じられなくなったときに、人の心はすさんでいきます。そうなった社会では安心を確保するために莫大なコストがかかってしまいます。ですから信頼し合える人間関係、社会の構築を目指していきたい。そのためにはやはり人格形成をなす教育です。

 私が一読者として産経新聞に投稿した記事がきっかけとなって、小学生は今年の秋から、中学生では来年度からの全ての教科書に「この教科書はこれからの日本を担う皆さんへの期待を込め国民の税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう」との文言が載ることとなりました。そういう感謝の気持ちから信頼は始まると思います。

 日本人として民族としてどんな価値観を伝え残さなければいけないのか。「次世代への教育」と言いながら、むしろ私達自身の価値観や生き方、哲学が問われ試されるのが教育だと認識しています。(三月二十九日インタビュー)

※『日本の息吹』19年3月号より。お申し込みはこちらから