ニュース: 事件 RSS feed
「苦しまずに死ねる」ネットに情報氾濫 相次ぐ硫化水素自殺 (2/2ページ)
■練炭より確実
硫化水素は卵の腐ったような刺激臭を発する有毒ガス。頭痛や吐き気、呼吸困難などの症状が表れる。高濃度の場合には数呼吸で失神、即死する。
あるホームページではこうした硫化水素の毒性を紹介し、「練炭自殺より、苦しまずに確実に死ねる」と宣伝。さらに、部屋の通気口などを粘着テープでふさいだり、「ガス発生中。入るな」の張り紙をしたりするなどの具体的な手順も記載している。
インターネットの有害情報を監視する民間団体には今年2月14、15日、「硫化水素を使った自殺に関する書き込みがある」という情報提供が2件相次いだ。この時期から自殺が急増していることなどから、団体関係者は「2月ごろからネット上で書き込みが増え、情報が広まった可能性もある」と話している。
昭和大薬学部の吉田武美教授(毒物学)は「一般に流通する商品で硫化水素は発生させられるが、極めて危険な行為。高濃度になると、嗅覚(きゅうかく)がまひしてしまうため、家族らを巻き込む2次被害の恐れがある」と警告する。
■メーカー困惑
実際、渋谷区の自殺未遂のケースのように、巻き添えの被害が後を絶たない。
神戸市北区の男性会社員(64)方の浴室では3月27日、アルバイトの二男(27)が「有毒ガス発生。開けるな」と張り紙をして自殺したが、会社員が意識不明の重体となったほか、妻や長男も有毒ガスを吸い込んで治療を受けた。昨年7月に神奈川県秦野市で男子大学生が自殺したケースでは、家族2人が巻き添えで死亡しただけでなく、救急隊員や警察官も目などの痛みを訴えた。
インターネット上で、硫化水素の原料として名指しされている洗剤の製造元は「自殺の道具に使われ、非常に困惑している。商品に『これと混ぜたら危険』と表示すれば、逆に自殺を促す結果になる恐れもある」と話している。