生家である神楽堂家の屋敷に住むようになって数週間。 大財閥の御曹司、神楽堂槇人は個性的な四人のメイド達に囲まれながら、賑やかな日常を送っていた。 ──だがそんなある日、彼の元に一通のエアメールが届く。 差出人はメイド連合協会 【Maid Union Society】、通称MUS。 手紙には、三年に一度開かれるアナザー・ワン同士の力比べ、『クイーン・オブ・アナザー・ワン』への 参加を呼びかける内容が記されていた。 開催場所はMUSの本部がある英国、ロンドン。折しも槇人の学園が長期休校中に大会が行われるとの ことだった。 世界中から集まるアナザー・ワン同士の戦い、それは美と武勇を誉れとする彼女達にとって、 彼我の力量を見極め、そして互いの旧交を深めるまたとない機会である。 更に「主に勝利を捧げる」という捧士(ほうし)としての忠道にも則し、また優勝者は 当代のヴィクトリア(最も優れたアナザー・ワンにのみ贈られる最高の称号)と手合わせを 出来るという、破格の報償まで付いてくる。 ──通常、参加を拒む者はまずいない。 アナザー・ワンにとっての最高の晴れ舞台、それが『クイーン・オブ・アナザー・ワン』である。 当然、彼の四人のメイド達は参加を希望するが、一つ問題があった。 それは、「一つの家からは一人のアナザー・ワンしか参加を認めない」という、大会のルールであった。 最強を自負する彼女達は、実力で参加権を得ようとするが、槇人は一人静かに首を振る。 「大会前に怪我したら本末転倒だから、模擬戦は不可。代わりに俺への奉仕(性的な意味で)で、 一番心がこもっていた者に参加権を与える。ほら、これなら誰も傷つかないし俺も気持ちがいい」 賛否両論の声が上がるが、主の命令コレ絶対。 出発までの数日間、槇人はメイド達とエロエロな日々を過ごす。 そして出発当日、槇人は一人のメイドを供にして屋敷を後にする。 残された三人のメイド達に、留守の間の屋敷の管理を任して。 だが門の前から槇人を見送ったメイド達は、彼の姿が見えなくなると屋敷の施錠をし、 三者三様の方向へと姿を消すのだった──。 |