揮発油(ガソリン)税の暫定税率が31日で期限切れとなり、衆参ねじれ国会の焦点は4月末の歳入関連法案の衆院再議決に移ったが、もう1つ隠された「時限爆弾」がある。揮発油税を今後10年間道路整備に充当することを定める「道路整備特別措置法案」だ。成立しなければ、暫定税率を元に戻しても道路予算を執行できないため、政府・与党は5月中旬にも衆院再議決する方針だが、「道路特定財源の一般財源化」を掲げた福田康夫首相の新提案と矛盾するのは明らか。野党の攻勢は必至で、法案の再議決が今国会最大のヤマ場となる可能性もある。(石橋文登)
道路整備特措法案は、31日で期限切れとなる道路整備財源特例法の改正案で、揮発油税を道路特定財源と指定し、昨年末に決定した道路整備中期計画(10年間)に基づき、どのように道路整備に充当するか「お品書き」を記している。
福田康夫首相が27日に表明した「平成21年度から道路特定財源の一般財源化」「道路中期計画(5年)を新たに作成」などの新方針と矛盾する法案だが、成立しなければ今年度の道路予算を執行できない上、地方に道路整備臨時交付金(約7000億円)などを配分できず、地方自治体に大幅な歳入欠陥が生じる。
このため、政府・与党は法案の衆院再議決を「やむなし」とするが、問題は4月末に予定される歳入関連法案と同時に再議決できないことだ。
法案は3月13日に衆院通過したため、憲法59条の「60日みなし否決」規定に基づき、衆院再議決が可能となるのは5月12日以降になる。与党執行部はもともと、平成20年度予算案や歳入関連法案とともに2月末に衆院通過させる方針だったが、衆院国土交通委員会が強行採決を嫌い、委員会採決を先送りしたのだ。
自民党幹部は「両院議長斡旋(あつせん)による与野党合意があったので委員会の判断を尊重したが、取り返しの付かない判断ミスをした」と悔やむ。
政府・与党は歳入関連法案の再議決を5月中旬まで先送りすることも検討しているが、そうなれば歳入関連法案に含まれる自動車重量税が4月末に期限切れとなり、一時的に自動車重量税が「格安」となり、新車登録が殺到する「パニック」も想定される。
与党は、首相の新提案と食い違いがないように参院で法案を大幅修正することも検討しているが、民主党などが応じる可能性は低い。新提案に沿った新法案を国会に提出することも可能だが、成立は早くても6月以降となり、地方は4月からの道路事業の凍結・延期を余儀なくされる。
4月末の歳入関連法案の再議決に続き、5月中旬にも2度目の再議決をすれば、民主党は参院に首相の問責決議案を提出する公算が大きい。「新提案を自らほごにした」と批判され、政権が窮地に追い込まれる可能性もある。
このため、自民党にも「法案成立を断念し、即座に一般財源化すべきだ」(中堅)との声があり、道路族と党内抗争となる公算も大きい。
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