人間は、自然淘汰によって生まれた。今も自然淘汰によって進化している。

自然淘汰が何を作ったのかを考えてみる。

 

 

<自然淘汰>

生き物は、突然変異などで遺伝子が変化し、少し違う者が生まれる。

その中で、生き残れる者が生き残り、生き残れない者が消えていく。

 

人間などの動物は、感じる(本能)ことで行動する。

お腹が空けば、食べる。

暑ければ、服を脱ぐ。

眠ければ、眠る。

怖ければ、逃げる。

 

遺伝子が変化することで、感じ方が違ってくる。

感じ方が違うことで、行動が違ってくる。

行動が違うことで、生き残る者と消えていく者に分かれる。

 

今を生きているのは、生き残るような行動をするように本能(感じる)を身に付けたと言うことになる。

 

 

<暗闇への恐れ>

子供のころ、夜中にトイレに行くのが怖かった。(田舎の古い家で、トイレが家の外にあった)

 

昔、人間の天敵だったヒョウは、夜行性で主に夜に狩をしていた。

夜の暗闇を怖いと感じる者は、夜は安全な所でじっとしていた。

夜の暗闇を怖いと感じない者は、夜に出歩き、ヒョウに襲われて死んでいった。

 

夜の暗闇を怖いと感じる本能を身に付けた者が、生き残ってきた。

 

 

<好き>

孔雀のオスは、色彩豊な羽を広げてメスにアピールする。

綺麗なオスを選んだメスは、綺麗なオスを生む。

その生まれた綺麗なオスは、多くのメスに選ばれ、多くの子孫を残していく。

綺麗でないオスを選んだメスは、綺麗でないオスを生む。

その生まれた綺麗でないオスは、メスに選ばれず、子孫を残せない。

結局、綺麗なオスを選ぶメスが生き残っていく。

 

人間の男も、美人を好きになる本能を身に付けた。

 

生活力・経済力の無い男を選んだ女は、子供を養えず、子孫を残せない。

生活力・経済力の有る男を選んだ女は、子供を養い、子孫を残してきた。

女は、生活力・経済力の無い男より、有る男を好きになる本能を身に付けた。

 

 

<いじめ>

時々、突然変異で色の違う者が生まれる。オオカミやサルなどは、色の違う者を大勢でいじめる。

 

保護色の動物が集団で狩をする時は、獲物に気付かれずにどこまで近づけるかが重要になる。

しかし、集団の中に色の違う者がいた場合、獲物に気付かれ狩が失敗する。

保護色の動物の群れの中に色の違う者がいることは、群れにとって死活問題になる。

群れを作る動物は、群れにとって望ましくない者を攻撃し、群れから追い出そうとする本能を身に付けた。

 

人間も群れを作る動物として、望ましくない者を排除しようとする本能を身に付けた。

泥棒や詐欺師などの犯罪者に怒りを感じるのは、この本能の一つと考えられる。

人間は、こうした本能によって怒りや嫌いなどを感じ、村八分、集団リンチ、差別、いじめ、民族浄化などを行ってきた。

ヒトラーやナチスがユダヤ人や障害者を排除しようとしたのも、この本能が関係していると考えられる。

 

 

<児童虐待>

妊娠期間が6ヶ月、子育て期間が1年と6ヶ月で、一度に5匹の子供を生む動物がいる。

子供を生んで6ヶ月に経たない時期に5匹の内、4匹が死んでしまった時、親は残りの1匹を見捨ててしまう。

一年掛けて1匹を育てるのと、1匹を見捨てて最初から二年掛けて5匹を育てるのを比較すれば、

二年掛けて5匹を育てる方が、生き残るための行動になる。

 

また、同時に複数の子供を育てる動物は、1匹の子供によって、他の子供の生存率を大きく引き下げるようなら、

その1匹を殺して(見捨てて)しまう。望ましくない子供を殺して(見捨てて)しまう方が、生き残るための行動になる。

 

人間も、すごく世話のかかる子供に対して親が“イライラ”するのは、この本能の一つと考えられる。

“イライラ”がエスカレートすれば、虐待してしまう。

 

 

<ストーカー>

オスが生まれてから死ぬまでに出会うメスの数が重要になる。

 

出会うメスの数が1匹の動物の場合

オスがメスに求愛し、メスに断られた時、あきらめてしまうオスは、子孫を残せない。

メスに断られても、メスが振り向くまで絶対あきらめないオスが子孫を残せる。

ほとんどのオスが、絶対にあきらめない本能を身に付けることになる。

 

出会うメスの数が複数の動物の場合

オスがメスに求愛し、メスに断られた時、あきらめても、別のメスを得て子孫を残せる。

出会うメスの数が多い動物ほど、あきらめるオスの生き残る可能性は高くなり、

あきらめるオスの割合は増え、あきらめないオスの割合は減る。

絶対にあきらめないオスの割合は、出会うメスの数に反比例する。(複数の条件の1つ)

 

人間には、絶対にあきらめない本能を持つ人が少しいて、ストーカーなどの行為をする。

 

 

<理性>

群れを作る動物は、望ましくない者を排除する本能を身に付けた。

すると、欲望に任せて好き勝手な振る舞いをする者は、群れから排除され、生きていけない。

そこで、世間体を気にしたり、罪悪感など好き勝手な振る舞いを抑えるための本能がいくつか作られた。

好き勝手な振る舞いを抑える本能が、人間の理性的な行動に大きく関係している。

 

 

<少子化>

子供を作るのに関係する本能はいくつかあるが、代表的な本能は性欲だ。人間は、性欲で子供を作ってきた。

しかし、避妊具や妊娠中絶が環境を変えた。この変化に対応できない人が数を減らしている。これが少子化の原因だ。

年間、数十万件の妊娠中絶が行われている。(厚生省に届けられている件数は3040万件。無届の中絶も相当あるらしい。)

それを思えば、避妊具と妊娠中絶を無くすだけで100万ぐらいの子供が増える。

 

現在、数は少ないが、“子供が沢山欲しい”と言う欲で子供を沢山産んでいる人たちがいる。

生まれた子供も同じ本能を受け継げば、その人たちも子供を沢山産む。

以前の環境では、“子供が沢山欲しい”という欲で子供を沢山生んでも、養えずに死んでいった。

今は、社会が豊になり、生活保護や施設も使え、生きていける。

 

今の環境が続けば、性欲で子供を作る人は減り、“子供が沢山欲しい”と言う欲(本能)で子供を作る人は増えていく。

単純計算なら千年で過半数を超える。

人間は、自然淘汰によって、性欲で子供を作る動物から、“子供が沢山欲しい”と言う欲で子供を作る動物に進化していく。

まだ始まったばかりだから、“子供が沢山欲しい”と言う欲は未完成な本能だが、千年も経てば確かな本能になる。

 

 

<一番大切なもの>

「一番大切なものは何ですか?」の質問に多くの人が、命や家族(恋人)などを答える。

人が、命や家族を大切だと考えるのは、命や家族を守ろうとする本能を持っているからだ。

多くの動物は命を守ろうとするし、子育てする動物は子供を守ろうとする本能を持っている。

 

知能は、知識や経験をもとに因果関係を理解する。

戦争では人が死ぬ。そうした知識や経験から、人は、命や家族を守るには平和が大切だと考える。

人間は、本能または本能と関係ある物しか価値が理解できない。

最近、人が環境を大切だと考えるようになったのも、命や家族(子孫)を守るには環境を守ることが必要であることを分かったからだ。

人間は、知能が因果関係を理解し、多くのものに価値を見出してきたが、その根本には本能があり、

実質は本能しか価値が理解できない。

 

 

<楽しい>

人間は、“空腹”を感じて、たんぱく質、脂質、炭水化物などを食べる。

食べて良い物は、“おいしい”と感じ、食べて良くない物は、“まずい”と感じる。

最初、おいしかった物でも、同じものを食べ続けると栄養が偏り体に良くないため、“飽き”を感じて、食べるのをやめる。

本能で、空腹・おいしい・まずい・飽きを感じて行動する。

 

人間は、“退屈”を感じて、知識、経験、機会などを得ようと行動する。

役に立つ物は、“楽しい”と感じ、役に立たない物は、“つまらない”と感じる。

最初、楽しかった物でも、繰り返しやると、新たに得る物がなくなるため、“飽き”を感じて、やめる。

本能で、退屈・楽しい・つまらない・飽きを感じて行動する。

 

ある人が、「動物は本能で動いているが、人間は人生を楽しんでいる。」と言った。

しかし、楽しんでいることも、本能による行為だ。

 

 

<悲しい>

まずい事をすると、後悔する。

後悔は、同じ失敗を繰り返さない様にする本能だと考えられる。

 

子供が死ぬと、親は悲しいと感じる。

悲しいと感じるのは、同じ悲劇を繰り返さない様にする本能だと考えられる。

 

長男がバイク事故で死んで、親は悲しいと感じる。

しばらくして、次男が「バイクを買って。」とせがんだ時、長男の死で悲しいと感じた親は、バイクを買わない。

同じ悲劇を繰り返さない様にする本能が、そういう行動をさせる。

 

また、事件や事故で死んだ人の遺族が、マスコミのインタビューで「こうした事が二度と起こらないような・・・」と言うのは、

この本能によるものと考えられる。

 

 

<本能>

人は、食欲という本能の存在意味を知っている。

動物から食欲を取ってしまうと、その動物はほとんど生き残れない。

動物の生死に関わる度合いが高い本能ほど、その存在意味は理解しやすく、

動物の生死に関わる度合いが低い本能ほど、その存在意味を理解するのは難しい。

 

人間には、数百の本能があると言われている。

しかし、生死に関わる度合いが高い本能は、ほんの一部であり、存在意味を理解されている本能は少ない。

多くの本能は、生死に関わる度合いが1%に満たず、その存在意味は理解されていない。

生死に関わる度合いが一世代で1%の本能は、百世代で63%になる。

コンピュータで百世代シミュレーションすることで、理解しにくい本能の存在意味が見えてくる。

 

人間は、数百の本能によって、

怒り、楽しい、悲しい、寂しい、嬉しい、つまらない、憎しみ、哀れみ、美しい、可愛い、醜い、好き、嫌い、

美味しい、不味い、寒い、暑い、痛い、痒い、綺麗、汚い、恥ずかしい、可笑しい、不安、不満、怖い、辛い、

退屈、飽き、興味、後悔、快感、欲しい、罪悪感、責任感、使命感、連帯感、・・・

などを感じ、行動する。

 

 

<補足>

今、人間が身に付けている本能は、過去に作られた物であり、過去の環境に合わせて作られている。現在の環境には合っていない。

<いじめ>の所で書いた“望ましくない者”は、過去の環境で“望ましくない者”であり、現在の“望ましくない者”とは一致しない。

<楽しい>の所で書いた“役に立つ物”は、過去の環境で“役に立つ物”であり、現在の“役に立つ物”とは一致しない。

現在の環境で“役に立つ物”を楽しいと感じる人が生き残ることで、この本能は現在の環境に合うように進化していく。