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東証532円高 金融不安、つかの間の緩和

2008年04月03日

 2日の東京株式市場は、米国の株高や為替相場での円安を好感して大幅に上昇し、日経平均株価は3月6日以来約1カ月ぶりに1万3000円台を回復した。欧米の金融大手の資本増強で金融システムへの不安はいったん和らいだようだが、市場には「つかの間の晴れ間では」という警戒感が消えない。

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日経平均株価は大幅に上昇した=2日、東京・丸の内、福留庸友撮影

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■大手の資本増強好感

 日経平均の終値は前日比532円94銭高い1万3189円36銭となり、今年3番目の上げ幅だった。東京証券取引所第1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は同51.58ポイント高い1282.07。出来高は20億6千万株。東証1部上場銘柄の約86%が上昇し、ほぼ全面高の展開となった。証券や金融株が買われ、自動車や電機などの輸出関連株も上昇した。

 他のアジア主要市場の株価指数も軒並み上昇した。香港は前日比3.17%、シンガポールは同2.56%、韓国は同2.34%、台湾は同2.2%とそれぞれ上昇した。

 円安ドル高に動いた為替相場も、買いの材料となった。2日の東京外国為替市場の円相場は、一時1ドル=102円台前半にまで下落し、東京市場では3月12日以来3週間ぶりとなる円安水準となった。午後5時現在は、前日同時点より1円83銭円安ドル高の1ドル=101円93〜95銭。

 1日の欧米市場から2日のアジア主要市場まで一巡した株高で、投資家がリスクを取る余力が高まり、低金利の円からドルやユーロなどの高金利通貨に投資する動きが強まった。今月半ばの米大手銀の決算発表まで円安傾向が続く可能性もあり、「1ドル=105円台もありうる」(市場関係者)という見方もある。

 今回の株価回復の直接のきっかけは、低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題に揺れる欧米金融大手が、資本増強策を打ち出したことにある。

 米証券大手のリーマン・ブラザーズは1日、増資額を当初の30億ドル(約3千億円)から40億ドルに上積みするとした。スイス金融大手UBSも、巨額損失の計上と同時に資本増強策を公表。投資家からは「底打ち感につながるのではないか」と好意的に受け止められた。

■市場の警戒感消えず

 一方で商品相場は下落傾向にある。1日のニューヨーク商業取引所の原油市場では、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格の終値が同0.60ドル安の1バレル=100.98ドル。一時は99.55ドルまで下落した。金相場の先物価格の終値は同33.70ドル安の1トロイオンス=887.80ドル。3月に史上初めて1000ドルを突破したが、利益確定の売りに押され、急落している。

 商品市場に流れ込んでいた資金が株式市場に戻る様相を見せており、日興コーディアル証券の西広市エクイティ部部長は「円安が進み、株式の売買量が増えてくれば、株価の上昇基調が続く可能性もある」と指摘する。

 日経平均は円相場が一時1ドル=95円台に急騰した3月17日、1万1787円51銭の今年最安値を更新。同日の終値を「底値」に以降は米株高などに支えられる形で上昇傾向が続いている。

 とはいえ、大手証券のストラテジストは「1日の資本増強策で世界の金融機関のすべての資本不足問題が解決されたかのような印象も出ているが、実際とは異なる」という。損失計上はなお続き、いつ資本不足問題が再燃するともしれないからだ。シティグループなど海外の大手金融機関の決算発表で、再びサブプライム関連損失が膨らめば、信用収縮懸念が改めて持ち上がりかねない。(古屋聡一、中川仁樹)

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