【ソウル中島哲夫】北朝鮮の「労働新聞」が1日付の論評で李明博(イミョンバク)韓国大統領を激しく非難し「破局的事態」に言及したのは、危機を演出して譲歩を引き出そうという典型的な「瀬戸際戦術」と言える。問題は局地的な武力衝突の可能性を排除できないという点だ。
北朝鮮は3月24日以降、開城工業団地内の韓国政府要員の撤収要求▽黄海で短距離ミサイル発射▽韓国軍幹部の発言をめぐり韓国側当局者の軍事境界線通過遮断を宣言--などを矢継ぎ早に行った。30日には「我々の核基地」を狙う動きには先制攻撃で応じ、その結果は「火の海程度でなくすべて灰の山になる」との評論を朝鮮中央通信が配信した。
これは単に李明博政権への威嚇ではない。北朝鮮報道機関の論評には、韓国が米国、日本との連携を強め、核問題解決の圧力が強まることへの警戒感が満ちている。6カ国協議が停滞する中、核開発の実態を隠したまま利益を得ようという意図もうかがえる。
韓国青瓦台(大統領官邸)報道官は1日の労働新聞論評について「北朝鮮の真意を分析する必要がある」と冷静な姿勢を示した。9日投票の総選挙にも、今のところ大きな影響はなさそうだ。
ただ、北朝鮮は威嚇に効果がない場合、さらに緊張を高めようとする場合が多い。未然の防止は関係諸国の課題と言える。
毎日新聞 2008年4月2日 2時30分