オーストラリア  2008年4月3日(木曜日)
炭酸ガス貯蔵プラント、VIC州で開設[資源]

ビクトリア(VIC)州南西部オトウェー盆地のニランダ(Nirranda)に2日、南半球で初となる二酸化炭素(CO2)の分離回収・貯留(CCS)プラントが開設された。同プラントはあくまで実証用として、深さ2キロの地中に最高10万トンのCO2を貯蔵する予定。開所式典には、国際会合に出席するために訪れていた日本の独立行政法人、産業技術総合研究所(産総研)の代表者らも出席したという。

この計画は、連邦政府と豪科学産業研究機関(CSIRO)、カーティン大、モナシュ大、アデレード大、メルボルン大、ニューサウスウェールズ(NSW)大の8機関と資源会社で組む温室効果ガス技術協同研究所(CO2CRC)が行うもの。式典には、ファーガソン連邦エネルギー相やバチェラーVIC州エネルギー相をはじめ、日米豪などが参加する「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(AP6)」会合のために訪豪中だった日米韓印の代表も列席した。

なお、日本側の出席者については、NNAの取材に対するCO2CRCの広報担当者と産総研広報業務室の説明が食い違っており不明。

2日付シドニー・モーニング・ヘラルド紙は、AP6のメンバーであり、温室効果ガスの排出量の多い国としてクリーン石炭技術のキープレーヤーとなるべき中国からの出席がなかった点を指摘。資源大手のリオ・ティントやBHPビリトンが、石炭価格交渉で中国側ともめている事実との関連性を示唆した。リオやBHP、エクストラータ、BPも、CO2CRCコンソーシアムの一員となっている。

ファーガソン・エネルギー相はこれに対し、前日になってから初めて中国の不参加に気付いたとコメント。先方の「日程と旅行手配上の問題」と弁解している。

同相は1日、各国の代表団を迎えたAP6の会合の席上で、地球温暖化の脅威にもかかわらず、化石燃料に頼らざるを得ない現状を強調。「だからこそ、クリーン石炭技術などがわれわれの気候変動に対処する主要な政策になっている」と語った。

今回のプラント開設の狙いは、CO2をパイプラインで漏れないように運び、地中に貯留できることを実証すること。成功した場合、CO2CRCは海底での建設も視野に入れつつ、排出源の火力発電所から120キロ以上離れた大型の商業用プラント建設を実現したい意向だ。

計画の責任者を務めるクック博士は、安全上の問題に絶対の自信を示した上で、向こう1〜2年にわたって周辺の大気や水の調査を進めると述べた。

豪国内では、主要な石炭火力発電所数カ所だけで約1億7,600万トンのCO2を排出している。すべてを地中に押し込めると、電力価格の高騰を招くのは必至とみられている。電力会社の業界団体ナショナル・ジェネレーターズ・フォーラムは、実用化するためにCCSプラントや輸送用パイプラインなどを整備した場合、十億豪ドル単位の資金が必要になると指摘している。

クック博士は、クリーン石炭技術が高額であることを認めつつも、「CO2排出を抑えながら化石燃料を使うのなら、これが唯一の道」と主張。「今後50年間に化石燃料の使用を止めるというのは絶対に不可能」との見解を明らかにした。

■4,000万豪ドルを投資済

このCCSプラントのようなクリーン石炭技術プロジェクトは、地球温暖化対策の1つにすぎない。環境政党グリーンズ(緑の党)は、同技術への支援額が連邦政府の代替エネルギー研究助成金の大部分を占める可能性に懸念を表明している。

連邦政府は既に、同助成金に総額5億豪ドルの拠出を約束している。ファーガソン・エネルギー相は、オトウェー盆地のCCSプラント計画が連邦政府やVIC州政府、研究機関、業界から受けた資金援助について、総額4,000万豪ドルに上ると説明。「CO2CRCは過去10年間、豪州をCCS研究で世界の最先端に押し上げてきた」と話し、実績によるものと訴えた。

VIC州のバチェラー・エネルギー相も、総額1億8,000万豪ドル超のエネルギー技術開発予算のうち、600万豪ドルを同プラントに充てたとコメント。温室効果ガスを2050年までに00年時点の60%に抑えるとした同州の目標達成の一助になるプロジェクトと評している。

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