西日本新聞

新年度、希望や不安交錯 筑後地区 久留米市、中核市に移行 江藤市長「サービス向上に尽力」

2008年4月2日 04:11 カテゴリー:九州・山口 > 福岡

 1日、筑後地区の官公庁や企業は、それぞれのスタートを迎えた。久留米市は中核市という新たなステージに立ち、リクルートスーツの新入社員も、希望を胸にこの日を迎えた。ただ道路特定財源の暫定税率の期限切れに伴うガソリン値下げなど、市民生活に大きく影響する動きもあり、市民にとって期待と不安が交錯する2008年度の出発となった。

 中核市に移行した久留米市は1日、新設した市保健所の開所式と、同市庁舎で移行式を開いた。

 午前8時から同市城南町の商工会館4階の市保健所で行われた開所式で、筬島(おさじま)健一保健所長は職員77人を前に「健康危機管理の拠点として、食中毒や感染症の未然防止や対応を迅速に行わなければならない。市民と協働し健康づくり態勢の充実も進めていきたい」と述べた。

 移行式には、江藤守国市長らが出席し、同市庁舎ロビーでくす玉を割り、「昇格」を祝った。

 同日午後に行われた定例会見で江藤市長は「気を引き締めて市民サービス向上に全力で取り組みたい」と抱負を述べた。さらに2008年度の市政運営方針として、中核市としての事務、事業の円滑な遂行▽人口減少、超高齢社会を見据えた安心して暮らせる街づくり▽徹底した行財政改革の推進‐などを挙げた。

■市民の知恵 街に生かせ

 久留米市の中核市移行は、地方分権時代に市独自の施策の範囲が広がるという点で、歓迎すべきだと思う。ただ移行は、街づくりの出発点にすぎない。中核市になって市民生活がどう良くなるのか。市政の真価が問われるのはこれからだ。

 市はこれまで、保健所運営など県から移譲される約2000項目の事務権限を使い「新しいメリットを創造する」とPRしてきた。しかし、その権限の活用法は具体的に決まっておらず、ビル建設に例えると、建築許可や工具はそろったが、設計図や完成予想図がまだ決まっていない状態だ。

 そもそも政令指定都市とは違い、中核市には教員の人事権がないなど、独自の采配(さいはい)を振るえる権限は少ない。江藤守国市長が「中核市の今の権限では十分とは言えず、さらに地方分権を進めるために財源措置も含めて国に訴えていきたい」と話すように、特色ある政策を打ち出しにくい実情もある。

 それでも、よりよい街づくりを進めるのが市政の役割だ。子育て、福祉、農業、商工業、道路…など課題は山積し、2011年春の九州新幹線鹿児島ルート全線開通という「大きなインパクト」(江藤市長)のある事業も迫っている。街づくりは待ったなしだ。

 取材を進めて気になったことがある。市民と行政との間にある温度差だ。市にとっては「格上げ」でも、市民には実感がなく、関心や期待も薄いと感じた。

 街づくりは行政だけでは完成しないし、住みよい街にしたいと願うのは、行政も市民も同じだ。久留米市の何よりの財産である30万人市民の知恵を生かし、街づくりを一歩一歩進めていくことが求められている。 (久留米総局・河津由紀子)

=2008/04/02付 西日本新聞朝刊=

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