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「米軍の反省は上っ面」 2年前、妻は殺された

2008年04月02日22時43分

 今回と同じ神奈川県横須賀市で06年1月、米兵に妻を殺された山崎正則さん(60)は、タクシー運転手刺殺事件の容疑者として神奈川県警が米海軍横須賀基地の上等水兵の逮捕状を請求する方針を固めたことを受け、「米軍は何も変わっていない。悔しいし、はらわたが煮えくり返る思いだ」と憤った。

 妻(当時56)は06年1月3日早朝、出勤途中に米空母キティホークの乗組員だった米兵からバッグを取られそうになった。抵抗すると、顔や腹を殴られたり踏みつけられたりした末、殺された。米兵は現金1万5千円を奪って逃走した。米兵は4日後に強盗殺人容疑で逮捕された。同年6月に横浜地裁で無期懲役の判決が言い渡され、確定した。

 法廷で謝罪はなかった。「あんな残忍な殺し方をしておいて……」。山崎さんは同年10月、国と米兵に約2億円の損害賠償を求めて提訴。米兵が犯行前に連日、市内で飲み歩き、米兵による犯罪も多発していたのに、上司が飲酒禁止などの措置をとらなかったとして、監督義務違反があったと訴えている。

 日米地位協定の民事特別法は、米兵が国内で公務中の違法行為で他人に損害を与えた場合、国が賠償義務を負うと定めている。米兵の犯行は勤務時間外だったものの、山崎さんは監督義務はあったとして米軍の責任を追及。国に対しても米兵犯罪の対策を講じていないと主張している。

 山崎さんは、訴訟とは別に、米兵犯罪の抗議集会などに参加して、妻を失った経験を語り、米兵による犯罪の撲滅を訴えている。2月中旬、東京都内で行われた沖縄県・少女暴行事件の抗議集会で、山崎さんは約80人を前に「米軍は日本を守ると信じていたのに、妻は残忍極まりなく殺された。泣き寝入りはできない。犯罪がなくなるために頑張りたい」と訴えた。

 悲劇はそうした中で、繰り返された。妻が殺されてからわずか2年後だった。

 山崎さんは「今回の容疑者が脱走した時点で、日本政府に何の報告もなかったことがおかしい。米軍が反省の日を設けたり一時的に外出を禁じたりしても、上っ面だけだ。基地を無くすのが無理なら、米兵を基地から出さないようにしてほしい」と言った。

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