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福岡・天神の公園、ホームレスと心の交流…町内会長、毎日声かけ


ホームレスの人たちと語り合い、自立を促す藤木敏一さん=久保敏郎撮影

 福岡市・天神の警固公園で、地元町内会長がホームレスの人たちと地道な対話を続け、自立を促している。公園から200メートルほどのビルで会計コンサルタント会社を営む藤木敏一さん(58)。昼間は段ボールをたたませ、地域の清掃活動に参加してもらうなど、社会とのかかわりを持たせようと懸命だ。

 活動は4年以上になり、公園を出て自立した人がお礼に訪れることも。「少しでも社会復帰のお手伝いができれば」と、日課の公園通いを続けている。

 「こんにちはー。体調はどうね?」

 「なんとか元気にやっとるよ」

 3月末の夕方。藤木さんが声をかけると、公園の隅で段ボールを組み立てて寝床を作っていた男性が振り向き、日焼けした顔をほころばせた。藤木さんはほぼ毎日、仕事の合間にこうして顔を出し、十数人のホームレスと話す。

 「天神2丁目1区」の町内会長に就任した4年ほど前、「公園がホームレスの出すごみで汚い」「怖くて公園に近寄れない」という住民の苦情に頭を悩ませる日々が続いた。

 正面から向き合うしかないと思いつつ、正直なところ、藤木さんも怖かった。恐る恐る「こんにちは」とあいさつを試みることから始めた。初めは目をそらされ、会話も成立しなかった。ホームレスの方も、藤木さんが自分たちを追い出しに来たと思い、おびえていたのだ。

 笑顔であいさつを続ける藤木さんに、次第に「こんにちは」と反応が返って来るようになった。交わす言葉が徐々に増えた。公園に住むようになった経緯や家族のこと、健康や将来への不安……。藤木さんはじっと耳を傾けた。

 信頼関係を築くと、昼間はテントや段ボールを片付け、周りを清掃するよう説く。昨夏からは、月1回の住民と店舗関係者の清掃活動にも誘っている。藤木さんの言葉には、皆、素直に従う。苦情は目に見えて減ってきた。

 藤木さんの助けで公園暮らしから抜け出した人もいる。病気の治療法を求めて新興宗教にのめり込み、家も財産も失った60歳代の夫婦は、生きる気力をなくして路上生活をしていた。藤木さんは「公的な治療を受ける方法がある」と、夫婦を1年がかりで説得し、病院に行かせた。

 土木作業で生活費を得ていた60歳代男性には、「今のままでは体が動かなくなった時、生活保護も受けられない。もう少し働いて家を探そうや」と声をかけ、励まし続けた。今は、夫婦も男性も、福岡市内でアパート生活を送る。

 ◆福岡市のホームレス、年々増加

 福岡市が昨年1月に確認した市内のホームレスは784人。九州では北九州市の176人(昨年末現在)などと比べ、突出して多い。

 期限切れの弁当を廃棄するコンビニ店や寝場所とする公園が多いためとされる。年々増加傾向にあり、5年前より2〜3割増えているという。



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