市販の家庭用洗剤などから硫化水素ガスを発生させる方法による自殺が相次いでいる。 インターネット上で「練炭に代わる方法」として取り上げられて広まり、今年に入ってから少なくとも10件発生した。家族や近所の住民が巻き添えになった例もあり、専門家は「助かっても後遺症が残る可能性があり、他人も巻き込む危険な手段」と警告している。
東京都渋谷区のマンション3階に住む女性会社員は2月中旬の朝、温泉のような激しい硫黄臭と頭痛で目が覚めた。薬を飲んでも治らず、悪臭もひどくなる一方。調べると、においは同じマンションの1階の部屋から出ており、閉め切った室内で男性が倒れていた。部屋には入浴剤などの容器が転がり、鍋から黄みがかった煙が上がっていた。
駆けつけた消防士に促され、2人の子どもと救急車に乗ったが、原因が硫化水素とわかったのは治療を受けた後。
一命を取り留めて、謝罪に来た男性は「ネットで知った方法で死のうと思った」と話した。女性は「子どもは病院から『観察が必要』と言われた。心配です」と不安そうだ。
高濃度の硫化水素ガスを吸い込むと、頭痛やめまい、呼吸障害が起き、ひどい場合は意識不明になり、死亡する。
この方法による自殺は1月以降、東京や大阪などで少なくとも10件起きており、14人が死亡。うち1人は家族が巻き添えになったとみられ、ほかにも助けようとした家族が病院に搬送された例もある。
「自殺サイト」と呼ばれるインターネットの掲示板でも、車の中などで練炭を燃やす方法に代わって、硫化水素による自殺をあおる書き込みが急増している。先月末に札幌市で無職男性(32)が自殺したケースでは、浴室のドアに「死に至る危険があります。絶対入室せず消防を呼んで下さい」と書かれた張り紙があった。
1月に東京都町田市の団地で男子高校生と母親が心中したとみられる事故では、高校生は頭に透明な袋をかぶり、ガスの発生後に袋を破って吸い込んだ形跡があったが、町田署などによると、張り紙や袋をかぶる方法は、ネット掲示板でも指南されているという。
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