県、病児保育の補助減額/政府の強化策に逆行
風邪など病気の子どもを預かる「病児・病後児保育」の一部施設で、今月から補助金が大幅に減額されることが一日、分かった。本年度から国、県、市町村が三分の一ずつ負担する補助金のうち、県が財政難などを理由に負担分を低く設定したため。病児保育を担う小児科医院は「補助金が減額されると続けられない」と訴える。全国病児保育協議会は「ニーズの高まりから全国的には補助金を増額しており、減額は聞いたことがない」と県の対応を疑問視している。(座安あきの、黒島美奈子)
病児・病後児保育は少子化対策の一環。医療機関や児童養護施設の併設型と保育所型などがある。現在全国に約七百カ所あり、国は二〇〇九年度までに千五百カ所に増やす。県内では九市町に十二施設あり、年間約七千人が利用している。
国は〇八年度から同保育事業を再編・強化。定員四人以上、看護師と保育士各一人ずつの施設(A型)は年六百六十万円の補助金を、新年度から保育士を二人配置すれば年間最大八百四十八万円まで増額した。
一方、県は行財政改革で予算の一律10%カットなどを理由に、A型施設の補助金を国が一年間の経過措置として設定した補助基準額六百万円を下回る年五百四十万円に設定した。
これを受け、補助金の残り三分の一を負担する市町のうち那覇市の一部と浦添・糸満・沖縄市、西原・北谷町は不足分を補てんして補助金を前年度並みに据え置くが、名護、豊見城、宜野湾市は減額する予定。
糸満市の担当者は「病児保育のニーズは高く、子育て支援の観点からも事業継続は必要」と話す。減額を予定している市は「ほかの市町の対応を見たい」としている。
安謝小児クリニックの高良吉広院長は、県負担分の減額について「本来なら補助金は増えるはずだったのに、国の強化策に逆行する県の対応に納得できない」と批判。「このまま事業を受けるわけにはいかない」と事業委託契約を保留している。
厚生労働省は、「(補助基準額を低く設定できる)経過措置は一年間だけ。〇九年度からは必要な予算を確保してほしい」とした。県は、「これまでは国と市町村が補助金を二分の一ずつ負担していた。急な制度変更で県分が発生し、〇八年度の予算編成に間に合わなかった」としている。
[ことば]
病児・病後児保育 保育園などに通い、病気や回復期で保育園が預かれない子どもを一時的に預かる。医療機関併設型が多いが、公的補助が足りず施設の9割が赤字運営という調査結果もある。県次世代育成支援行動計画「おきなわ子ども・子育て応援プラン」によると、県内の施設数は2009年度目標28カ所で、目標達成率42・9%と低い。