
着任後、早速診療にあたる山城医師=珠洲市総合病院
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珠洲市総合病院の産婦人科に一日、沖縄県の久米島から新任の山城玄医師(58)が着
任した。同科は前任の産婦人科医が三月末で退職し、市民からは「休診に追い込まれるの
ではないか」と心配の声が上がっていた。泉谷満寿裕市長から同科医長の辞令を受けた山
城医師は「この年齢になり、ようやくお産のことが分かってきた。これまでの経験をこの
地で生かしたい」と抱負を述べた。
山城医師は旧内浦町小木出身。金大医学部院生時代に、自ら希望してサウジアラビアの
日本企業アラビア石油の診療所に赴任し、産婦人科医師としてのスタートを切った。現地
で約二年半勤務した後、大学に戻り、その後、舞鶴市の病院を経て三年前に沖縄・久米島
の公立久米島病院に赴任した。
久米島では血液の備蓄がないため、診療は外来に限定されていた。手術患者は約百キロ
離れた沖縄本島に頼らなければならず、多少不自由さを感じていた昨年秋、金大の先輩で
面識もあった珠洲市総合病院の波佐谷兼綱院長(現同病院地域医療対策室長)から誘いが
あった。山城医師は「乳児に優しい病院」を掲げ、母乳で育てる運動の普及、実践を続け
ており「珠洲なら自分の考える医療ができる」と引き受けた。
山城医師は、近年の産婦人科医離れについて「リスクが大きいから毛嫌いされるともい
える。お産だけを扱う医療センターの体制があってもよい」と話し、過疎地の産婦人科医
療の充実を求める。二人の子どもは独立し、夫人は金沢住まいだが、「単身が長く、一人
暮らしは苦にならない」と笑顔で話した。