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2008年4月2日

◎新社会人へ モンスターでは生き残れない

 晴れて新社会人となった若者に指摘しておきたいことは、社会の常識や会社のルールを わきまえない「モンスター」では、どこの組織でも生き残るのは難しいということだ。石川県内で入社式や入庁式が行われた一日、組織トップからは不透明な景気の先行きを反映し、若い力に期待を寄せる言葉が相次いだが、この日の緊張感や謙虚さを忘れず、早く一人前の戦力になってほしい。

 学校に理不尽な要求を突きつける「モンスターペアレント」や看護師に暴力をふるった りする「モンスターペーシェント(患者)」などが社会問題化している。自分のことしか頭のない、そうした人たちは誤った個人主義の極みといえる。それらは極端な例としても、学生時代の常識が社会で通用しないことは往々にしてある。集団で利益を追求する企業で、自分勝手な言動や行動がはびこれば組織は体をなさないだろう。

 社会経済生産性本部が名付けた今年の新入社員像は「カーリング型」である。企業がそ っと背中を押し、ブラシをこすって働きやすい環境を整えようとしても、当の新入社員は会社や仕事への執着が薄く、少しでもこするのをやめると、減速したり、止まったりしかねないことの例えである。

 団塊世代の大量退職などで就職戦線は売り手市場となり、同本部の昨年度の「働くこと の意識」調査では、就職の一番の理由は「自分の能力、個性が活かせるから」となり、個人の技能や興味に関する項目が上位を占めた。「就社」より「就職」という意識が強まり、「カーリング型」は帰属意識の薄い若者の扱いの難しさも示している。

 自分に最も合った会社に就職するのがベストだが、実際は理想と現実との落差に悩むこ とも多いだろう。そこで現実を理想に近づける努力をせず、むしろ自分の現実を正当化し、すぐに見切りをつける傾向が昨今の離職率の高さにつながっているとの指摘もある。

 むろん、初めて飛び込んだ世界で知らないことが多いのは当たり前である。人材確保が 厳しい折、働く意欲をもつ新社会人に企業は支援を惜しまないだろう。ぜひ「学び上手」になってほしい。

◎期末株価前年割れ 「春は名のみ」新年度入り

 株価の低迷が長引き、東証一部上場企業がこの一年間で失った時価総額は実に百五十九 兆円に達した。国家予算の二倍近い「企業価値」が煙のごとく消えた計算であり、「春は名のみ」の歌の文句を思い出させるような、風の寒さが身にしみる新年度入りである。

 一日発表の日銀短観では、これまで業績拡大を続けてきた製造業の景況感が急速に悪化 した。サブプライムローン問題に端を発した米国景気の低迷と円高、原油など原材料高の「三重苦」がずっしり重く、利益が出にくくなってきた。特に〇八年度の設備投資計画(全産業)は、大企業が前年比1・6%減と四年ぶりに減少し、下期については9・3%の大幅減少が見込まれるなど、気掛かりな数字が並んでいる。

 時価総額のマイナス幅も深刻で、東証一部全銘柄の年間下落率の平均は、29・2%に も及んだ。企業の時価総額は期末株価×期末発行株式数で決まるから、この急激な資産デフレ下では、企業の投資行動は慎重にならざるを得ない。銀行融資などで返済の裏付けとなる企業資産が目減りし、資金調達が不利になるうえに、M&A(企業の合併・買収)の標的にされるリスクも高まるからである。

 これまで日本株の下落は、あくまで原油高や米国景気の後退懸念といった外部要因によ る一時的な下げと言われた。主要先進国との比較で日本株は著しく割安水準にある半面、企業業績はそれなりに好調だったからだが、そんな楽観的な見方は、ものの見事に吹き飛んでしまった。

 日本経済は今、正念場を迎えているのだろう。それなのに、国会は機能不全に陥り、日 銀総裁のメドすら立たない。景気が青息吐息にある危機感を共有し、実体経済のこれ以上の悪化を食い止める強い決意を示さねばならない。空席になっている日銀総裁の選出を急ぎ、道路特定財源の暫定税率を与野党協議で修正、決着させてほしい。そうでなければ、外国人投資家の「日本売り」が続き、株価のもう一段の下げを覚悟しなければならなくなる。


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