2008年3月31日

雨の開幕戦です。初めて、白のユニフォームに袖を通しました。
キャンプ中はずっと赤地や青地の練習用ユニフォームで、開幕の今日、ようやく
白地を着る事が許されたのです。やっとフィリーズの一員になった、
そんな気がしました。スタートの象徴とされることの多い「白」は、
野球選手にとっても、やはり心引き締まる色なのです。

試合前に全選手、スタッフと交わしたハグが、忘れられません。
お互いに短く一言ずつ、「がんばろう」「いいシーズンを」などと
言いながら、がっちりと抱き合うのですが、実に多くの選手が、
「ＨＡＶＥ　ＦＵＮ！」と声を掛け合っていました。
日本語にしたら「楽しめよ！」

野球はシリアスに行うべき、グラウンドで白い歯を見せて
笑うべからず、というスポ根の時代に育った僕は、
「楽しむ」という野球を長いこと経験せずに生きてきました。
そして今日、このスポーツの原点が、空き地で棒を振り回し、
歓声を上げる楽しい遊びであることを、しみじみとかみ締めたのです。
楽しいから、もっともっと、もっと、続けていたい、それがすべての始まりだったと。

過去のオリンピックで「楽しみたい」と発言した代表選手のことを、
ふと思い出しました。そして彼女を「不謹慎だ」と糾弾した人たちのことも。
楽しむことが、すなわち不真面目、いいかげんであるとは絶対に思いません。
真摯に打ち込み、全力を傾け、更なる上を目指したくなる、
それもまた、スポーツの「楽しみ」ではないでしょうか。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年3月30日

フィリーズの３Ａのチームとの対戦で、今年のスプリング・トレーニングを
締めくくりました。ちょうど先方の球場がこけら落としとのことで、１時間半かけて
寒い・遠い・眠いの遠征デーゲームです。しかも明日開幕なので、
レギュラー陣はとっとと帰ってしまいました。試合をするには人数が足りないため、
２Ａの若い選手たちが助っ人で合流。結局、フィリーズ傘下の「メジャー・２Ａ混合」対「３Ａ」という、
お好きな方にはたまらない取り合わせとなりました。

帰りのバスは、監督・コーチと、野手６人。明日の勝利を祈りつつ、
ビールを飲みながら盛り上がり、車内は観光バス状態に。
僕はシチズンズ・バンクパークから家までの運転があるため
飲みませんでしたが、すかすかのバスの中で会話を楽しみながら、
（結局今日、俺はどこに行ってたんやろか）と、考えていました。
えー、フィラデルフィアから、たぶん北西のほうでした。

２００８年のシーズン、プロ１７年目の開幕前夜。
お祝いに、「タイのお頭つき」などの特別なことをあえてしない我が家ですが、
味噌汁の中に、ダシを取った「いりこの煮干」が、丸のまま「お頭つき」で入っていました。
ヨメのズボラも、今夜ばかりは特別感を盛り上げてくれた、ということにしておきましょう。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年3月29日

動くプールがあるのです。もう、大興奮です。初めて見ました。
ジャクージでもなく、アイスバスでもなく、プール。３×５メートルほどの大きさで、
そして、深い。階段もないから、
「こんなん入られへん！」と叫んだら、
トレーナ−が得意そうに、
「まあ、見てろ」と、リモコンスイッチを取り出しました。
おお、みるみるうちに、プールの底がせり上がってくるではありませんか！
用途に応じて、深さが変えられるプールです。以前ラスベガスで観た、
「シーク・ド・ソレイユ」の「Ｏ（オー）」というショーを思い出しました。
舞台にプールがあって、それが場面の転換とともに、徐々に浅くなり、
最後は消えていくのです。ちょうどそんな感じで、気分はすっかりサーカスの団員。

さらに、プールの底が、ベルトコンベアのように動く。
水中をずっと歩けるようになっているのです。
そして、水中カメラが、その様子を映し出し、自分の歩くバランスや
脚の使い方などをチェックできる仕組み。
ジェット水流が前方から吹き出てくるのは「お約束」で、その抵抗に向かって
延々と、「その場泳ぎ」をすることもできます。

今日は三塁ベースコーチのスティーブ（スミス）が３０分ほどそこで泳いでいました。
しかし、水中眼鏡を吹き飛ばしそうな勢いの水流をモロに顔面に受け、
「あぶぶぶぶぶうわわわわわあ」という状態になるらしいのです。
ジェットコースターなどで、顔が風圧で曲がってしまう、あれの水中版です。
「ここで泳がないほうがいいよ」と彼。
「顔が疲れる」

僕は素直に彼の忠告を聞くつもりでいます。
そもそも、泳がれへんし。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

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