見ると、赤坂事務所からの転送である。
事務所は無人になることもあるので、そういう場合、私へ転送されるように設定がなされているのだ。
会社名を名乗って出ると、渋い男の声である。
先物や株や名簿などの営業も多いが、それらはたいてい、ハイテンションな若い男のことが多く、明らかにそれとは異質。
「作家の、マツイです」
「あ! 松井先生! ご無沙汰しています」
松井先生は、長いキャリアを持つ作家である。
かつては戦記物ノベルスなどを量産されていた。
量産と言えば聞こえが悪いかもしれないが、つまりは売れっ子で、ピーク時の年収は2,500万円をゆうに超えていたというのだから、やはりれっきとした職業作家である。
ある不遇な縁の重なりから、いくつかの変遷のうちに、妻女と別れ、自身はホームレスとなった。
絶望的な状況の中から、その境遇そのものを克明に記録し、名著『ホームレス作家』を著述された。
ある不遇な縁の重なりから、いくつかの変遷のうちに、妻女と別れ、自身はホームレスとなった。
絶望的な状況の中から、その境遇そのものを克明に記録し、名著『ホームレス作家』を著述された。
あれはまだ私が前職の会社で、不良社員になりかけの頃だ。
昼休みにでかけた書店で、そのタイトルに惹きつけられ、迷わず買い求めた。
その後、昼食を摂りに入った、カレーで有名なある喫茶店──目の前に、カツカレーが運ばれてきたような記憶があるのだが、開いた本に熱中して読みふけるうち、カレーはすっかり冷えて固まっていた。
それくらいスリリングで、生々しいリアリティと、この世の現実が抱える不条理に満ちた名著だった。
人の縁とは不思議なものである。
私はこれまで、会いたいと思う人たちには、会うことができた。
アーチストの方が多いのだが、無理せずとも自然に、お目に掛かることができた。
松井計先生もその一人で、あるパーティーに社員ともども参加すると、そこにいらっしゃった。
そんな松井先生からの電話である。
……と、ここまで書いたところで、日常業務立て込んできたので、続きはまた!
私はこれまで、会いたいと思う人たちには、会うことができた。
アーチストの方が多いのだが、無理せずとも自然に、お目に掛かることができた。
松井計先生もその一人で、あるパーティーに社員ともども参加すると、そこにいらっしゃった。