2008年03月31日

バイタイ

 月末であり、期末であり、しかし週初めである今日、なかなか忙しかった。
 まず、なにより納税である。
 1月末決算の弊社にとって、2ヶ月後の決算仕上がりと納税はデッドラインで、先の週末も、税理士先生とのやりとりで忙しかった
 決算の結論はともかく、今期から消費税が絡むのである。
 受け取った消費税と支払った消費税を、相殺して差額を納める(あるいは還付される)のが基本なのだが、先に支払うべき消費税を決め込んで、いくらか節税をする手もあると聞く。
 税理士先生はそこらが腕の見せ所なので、いろいろ解説してくださるが、いまだによく判らない。

 まあとにかく、月末の払いはあるし税金の払いはあるし、大変なのだ。
 アサイチであてにしていたささやかな入金が、11:00時点でないので、プチ事件である。
 あまり明確には言えないが、どこかへの送金が、プライオリティが低くなる。
 聞きたいかな?
 言うか。
 たとえば、
「まー、うちのささやかな分くらいはちょっと待ってくださいよ」の顧問弁護士。
「すべてを握ってるんだから、台所にダイコンの葉しかないのが判るでしょ」の会計事務所。
「とっくにたくさん敷金入れているじゃないですか」の事務所家賃。

 でも、お仕事してもらった仲間や外注の方には、粗相をしないギズムです。

 ともあれ、そういうことで、朝から昼までドタバタした。

 今日から、キャラバンなのである。
 エントリのタイトルにもある、バイタイ。
 バイタイ=媒体=メディア。
 拙著の配本を前に、いろいろなメディアが取り上げて下さる、あるいはその可能性がある。
 詳細はここでは書かないが、今日伺ったのは、新聞社2紙と雑誌1誌。
 新聞2紙の担当者は、実にありがたいことに、よく読み込んでいて下さった。

 こうした「バイタイ訪問」は、初めてのことではない。
 1993(Mac)、1994(Win)年に出した作品集「MOVIE100」でも、当時勤めていた会社の営業部長とともに、各雑誌社や秋葉原の量販店を歩いた。
 マスターアップ終わった〜! さあ、数ヶ月封印していたビールでも飲んでしばらく眠ろ〜! と思っても、甘いのである。
 そこからなのだ。

 版元であるサンマーク出版が主催してくれた打ち上げの会が、今夜あった。
 新宿の某ホテルのレストランだった。

 メンバーは、ごく内輪のものである。
 内輪と言っても、
「執筆に関わる内輪」と「出版に関わる内輪」は別なもので、今夜は後者だった。
 ありがたいことに次作の話なども出たが、ハードルは、高い。
 編集長の要求が、高い。

 配本前夜──まだ初速も、半年単位の部数も、返品率も何もない状態で、この会をセッティングしてくれた版元はさすがだ。
 まだ見ぬ夢も、または悪夢もない、絶妙のタイミング。
 つぼみが最高にふくらみ、一部がほころんだ桜の許で、ごく少人数で静かに行う花見のようなものである。

 高名なデザイナーのブックデザインは嬉しい、
 大手書店チェーンの大量発注も嬉しい、
 予約好調のECサイトの噂も嬉しい、
 新聞社や放送局の取材も嬉しい、
 なにもかもがありがたい──。
 が、正直なところを、申し上げた……。

出版社:「我が社では、自社の出版物でも、気になるものは、自分で買うシステムなんです」「今回、かなり多くの者が『クリムゾン・ルーム』を買いました」

 こういうことは、この期に及んで著者へのお世辞でもないので、素直に嬉しい。
 その後だ。

「マリアンヌ派と桐子派、どっちかで盛り上がっているんです」「そうですね! 主人公かKの、どっちに感情移入するかで、意見が分かれるんですよ」「ヤクザのコウの、ファンもいるし……」

 自分が、空中からつかみ取って造形したキャラクターが、まるでそこにあるもののように語られる……作り手を自負する者にとって、これ以上の賛辞があるかと、痺れる思いだった。

 短絡的に、自画自賛と思うなら、そう思いたまえ。
 しかし、それをしたいのではないのです。

 アイデアは作品ではなく、作品はまだ商品ではない。

 そこまではいい。

 作品が、商品になろうとしたとき、契約がある。
 これは、とても重いものだ。

 契約を経て、作品は商品になる。

 商品とはつまり何か?──多くの人が、仕事としてそれに関わり、労働し、対価と歓びを得る、それそのもの、である。

 思いつくままに、私の知る限りを並べよう……。
 もちろん、それぞれは可逆的に前後するので、延べ人数は、もっと多いはずだ。

 著者>友人>エージェント>編集者>校正者>校訂者>デザイナー(中身とカバーはたいてい別)>責了者>製版者>印刷者>製本者>運送者>出版営業者>PR者>メディア>取次業者>書店営業者>書店長>書店員>読者……

 プロから見れば、かなり抜けているだろう。
 いま、雑に思いつくままに書いても、これだけの人が関わるのである。

 CD-ROMタイトルや書籍の出版は初めてではないものの、これだけの仕組みをナマで見られるのは
そうそうある体験ではない。
 それが、とても、嬉しいのです。

 ともあれ、私のスピリットは『高木工務店』の時と、いささかも変わっていない。
 K君のみならず、我こそはと思うクリエイター諸君! 素晴らしい師匠は多いし、高額ギャラの職場もあるだろう。
 しかし、クリエイションに迷ったら、一報下さっていいですよ。
 この歳で、おめおめと、新人小説家の気分の男もいます。
 あなたのクリエション魂を、一番効率的にどこかに導ける自負があります。
 私のように回り道をしなくても済む。
 回り道も、とっても大切ですが!

 時系列では逆になりますが、今朝、初めに受けた電話が、かねてから敬愛していたある作家先生からのものだったのです。

 もったいないので、また別の機会に!
posted by TAKAGISM at 23:59| Comment(2) | 仕事
この記事へのコメント
では、お言葉に甘えて早速一報をいたします。

何度となく回り道をし、いつまでも底辺を彷徨って自己創造すらできないでいる(こちらからはそう見える)“なお●ぱ”さんに、高木さんから一言お願いいたします。

全身全霊をかけて、自分の作品を創って欲しい。職人が魂を込めて作品を産み出す様に、彼にもそうあって欲しいのです。

なぜ? 

それを待っている者がいるから。
・・・なんちゃって(笑)


人は皆 それぞれに与えられた才能があると思うのです。それに気づき、それを開花させる事ができたならば、本当に素晴らしい事だと思います。

“なお●ぱ”さんにも、早く自分の才能に気づき、自身を持って生き抜いて欲しい、ただそれだけです。



高木先生、どうか魂を揺さぶってあげて〜〜(笑)

最後に
クリムゾン・ルーム出版おめでとうございます。 
Posted by 心哲 at 2008年04月01日 12:52
高木先生(で、いかせていただきます)

そんなに二日後に「やっと」手にはいる人を、刺激しないでください〜。

昨日は先生の友人(?)でもあるいくえみ綾先生の新刊がでたのをmixiで21時頃知って、身悶えしました。

さて、これから読むのですが、うひひひ、ネタバレコメントを読んでも、表紙をみても「今回は・・・?きみが主役?」
もうわくわくです♪

同じようにこのネタバレチックな数々の日記。

悶えています。


いちこにこ
Posted by いちこにこ at 2008年04月01日 12:54
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