パリ・オペラ座バレエ団名古屋公演
世界最高峰のバレエ団が来日!5月29、30日 愛知県芸術劇場大ホール
【暮らし】生活保護を考える(中) 母子家庭2008年3月25日 「最近ようやく人間らしい生活ができるようになった感じです」 東京都内で生活保護を受ける女性(35)は落ち着いた表情でそう話した。九歳と六歳、三歳の計三人の子どもを育てる母子家庭だ。生活保護費や児童扶養手当、元夫からの養育費を含めた一カ月の生活費は約二十四万円。 家賃や光熱費などを差し引けば、家族四人の食費や衣服代、学用品などの雑費に使えるのは七万円程度。それでも、女性は「決して楽ではないが、結婚しているときは、月二万円ぐらいで何とかしなければならなかった。当時に比べればまだ余裕がある」と、たくましい。 離婚したのは三年前。元夫は定職に就かず、趣味の車やパソコンに大金を注ぎ、借金も女性に隠していた。浮気も発覚し家に戻らなくなった。それを責めると暴力を受けた。三人目の子どもができると、「オレはおまえと子どもの犠牲にはならない」。離婚を決めた。 元夫からの養育費が二年間滞っていたが、最近になって、元夫側から養育費減額が請求された。女性が渋々応じると再び養育費が振り込まれるようになった。子ども三人分で、月六万円。 それでも恵まれているほうだ。国の統計では、元夫が母子家庭の養育費を支払っているケースは全体の一割程度。十分な扶養能力がありながら、拒否する例も多い。 生活保護法には、保護費を支出した自治体が父親に対し、司法手段などを通じて負担を要求できる規定があるが、適用している自治体はほとんどない。厚生労働省は「各自治体にノウハウがないのが要因」と判断。新年度にも、適用マニュアルを各自治体に配布する予定。 生活保護に頼らざるを得ない母子家庭は増えている。二〇〇四年度で約八万七千世帯。全生活保護世帯数の9%を占め、過去十年間で一・七倍にふくらんでいる。 国は、増加を続ける社会保障分野の予算抑制に躍起だ。「老齢加算」と同じく、生活保護を受けていない低所得世帯との「均衡を図る」という理由で、十六歳から十八歳の子を持つ一人親への母子加算は〇七年度から廃止。十五歳以下の子どもの分も〇七年度から段階的に削られ、〇八年度の七千七百五十円(月額)が最後の支給になる。 女性は「子どもに、十分な教育を受けさせてあげられるかどうか…」。将来への不安が胸をふさぐ。離婚直後、無理をして働いて腰と首を痛め、今も働ける体ではない。「早く働けるようになって、この状況から抜け出さなくちゃ、と焦る」 母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事の赤石千衣子さんは「生活保護世帯の方が、多数の低所得世帯より収入が高くなるのは、大半の母子世帯が生活保護を受ける権利があるのに受けていないから。生活保護費を減額して、より低い方に合わせる政策は、格差を助長する」と批判する。 さらに「夫が家庭にお金を入れなくても、暴力があっても、長い間、我慢してしまう女性は多い。私たちに助けを求めに来たときは肉体的にも精神的にも疲弊している人が多い」と指摘。疲れ切ってしまう前に、生活保護に助けを求めることを勧める。 「疲弊してからでは自立が難しく、生涯にわたって生活保護を受ける可能性が高くなる。結果的に、国の支出も高くつく。国は自立支援に力を入れているが、生活保護申請の“入り口”を低くすることが必要だ」 (渡部穣)
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