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2008年3月28日 (金)

積極財政に関する質問に対する福田首相の答弁書(小野盛司)

(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第五十弾です)

 先週の水曜日に提出した質問主意書に対する福田首相の答弁書が本日届いた。質問は、

 政府発表の試算「進路と戦略」によれば、積極財政によって成長が加速され、失業率が下がり、デフレ脱却が可能となり、しかも財政が健全化するとなっている。それでも積極財政を否定するのか。それはこの試算が誤差が大きすぎて使い物にならないということか。そうであれば、そのような試算を基に歳出削減や増税を国民に強要するのはおかしい。

という内容であった。

 それに対する福田首相からの答弁では、なんと「積極財政を否定」の意味が必ずしもよく理解できないと言って逃げた。こんな易しい言葉の意味が分からないとは何と言うことか。その次の行以降に書いてあることは、この質問とは全く関係ないことだ。国民を馬鹿にするなと言いたい。

 このやり取りで分かるように、積極財政によって成長が加速され、失業率が下がり、デフレ脱却が可能となり、しかも財政が健全化するという試算結果を政府は発表していることは確認された。それに対し、積極財政のどこが悪いのかという議論を政府は全くできないことがこの答弁書で明らかになった。

平成二十年三月十九日提出
     積極財政に関する質問主意書
                         提出者  滝  実

 1月17日に経済性諮問会議から提出された「日本経済の進路と戦略」(以下「進路と戦略」が内閣府の名で発表されている。ここで成長シナリオケースAと成長シナリオケースBの比較が示されている。歳出削減幅がケースAでは14.3兆円、ケースBでは11.4兆円ということであるから、相対的に言えば、ケースAが緊縮財政、ケースBが積極財政と見なすことができる。両者を比べると別表のようになり、この3年間では積極財政のほうが、緊縮財政よりも、成長率が高まり、デフレ脱却へ大きく前進し、失業率も減り、しかも国の債務のGDP比は減少し、財政は健全化し持続可能となっている。つまり、積極財政のほうが、緊縮財政よりもあらゆる面で良い結果を導くということは、明らかであり、政府の行っている緊縮財政は全く正当化されない。

 2012年度からこのモデルでは債務のGDP比が逆転する可能性があったとしても、それが積極財政を否定する理由にはなり得ない。なぜなら2012年以降となるとモデルの精度が著しく悪くなるからである。例えば、2007年1月に発表された「短期日本経済マクロ計量モデル(2006年度版)の構造と乗数分析(ESRI Discussion Paper Series No.173)」と平成19年3月に内閣府計量分析室で出された経済財政モデル(第二次改訂版)で乗数を比べてみる。公共投資をGDPの1%相当継続的に拡大したとき、名目GDPの増加は1年目は両モデルの差は2.5%だが、3年目となると38.5%と飛躍的に拡大するのであり、2012年度の精度は極めて悪いと考えるべきである。つまり積極財政を否定することは無理だと言うべきである。そこで質問する。

一、積極財政を否定するのは「進路と戦略」はすべてが誤差が大きすぎて使い物にならないという理由からか。そのような信頼性に欠くモデルで歳出削減や増税を国民に強要すべきではないのではないか。

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

内閣衆質一六九第一九八号
    平成二十年三月二十八日
                    内閣総理大臣 福 田 康 夫

衆議院議長 河 野 洋 平 殿

衆議院議員滝実君提出積極財政に関する質問に対する答弁書
一について

 御指摘の「積極財政を否定する」との趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定。以下「基本方針二OO六」という。)及び「経済財政改革の基本方針二OO七」(平成十九年六月十九日閣議決定)において、歳出・歳入一体改革を実行するとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組むこととしている。

 なお、御指摘の「日本経済の進路と戦略―開かれた国、全員参加の成長、環境との共生―」(平成二十年一月十八日閣議決定)の参考試算においては、基本方針二〇〇六の別表に示された十四・三兆円の歳出削減の考え方に対応するケースと、十一・四兆円の歳出削減の考え方に対応するケースを想定しているところである。

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コメント

高橋博彦さま
ただ私も「いつ如何なるときも積極財政反対」なのではありません。
「(一般的には)今は時期ではない」と言うだけです。
例えばの話
東名高速道路は夜中の1時・2時ごろでも「東京料金所~厚木」ぐらいまでは10tトラックが引っ切り無しに走っていて追い抜けないほどです。
静岡ぐらいでやっと「空いた」と感じるでしょうか?
だから「第二東名」(約7兆円の建設費)は絶対に造るべきです!
それとドイツのアウトバーンのような「速度無制限」として建設するなら事情は違ってきます。
スーパーカーがどんどん売れますから・・・
私も2時間程度なら150km/hぐらいで走行(湯沢~練馬)したことがあります。
(警察には内緒ですよ!coldsweats01

投稿 柳生昴 | 2008年4月 1日 (火) 00時25分

柳生様

 コメントありがとうございました。
さまざまなご意見があろうかと思います。

投稿 高橋博彦(管理人) | 2008年3月31日 (月) 15時24分

積極財政論は既にとっくの昔に失敗しているのです。
90年代に総額130兆円の追加経済対策をやったのですが
平均成長率は1%程度でした。
おまけに財政赤字も拡大しました。
(踏んだり蹴ったり・・・)
それでこの時代を「失われた10年」と言うのです。
そこで「小泉構造改革」が始まったのです。

投稿 柳生昴 | 2008年3月31日 (月) 14時18分

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