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2008年4月1日

◎道路特定財源 暫定税率下げも妥協の一案

 ガソリン税などの暫定税率の失効で、北陸でもきょう一日以降、ガソリン価格が二十五 円程度下がることになった。これにより石川県や富山県でも歳入欠損が生じるなど混乱が避けられない半面、一般的な自家用車で満タンにした場合、これまでより千円ぐらいは安くなる。高いガソリンに悲鳴を上げていた一般消費者は、大歓迎だろう。

 だが、福田康夫首相は、今月末にも租税特別措置法案を衆院で再可決し、暫定税率を復 活させる意向を示している。与野党が背を向け合う状態で、ガソリン価格だけが乱高下し、そのたびに国民が右往左往させられるのでは、たまったものではない。

 ここはやはり与野党が暫定税率の穴埋めをどうしていくか、真摯(しんし)に話し合う べきだ。ボタンを掛け違えた与野党の修正協議を仕切り直し、妥協点を探ってほしい。たとえば暫定税率をそのまま復活させず、税率を大幅に下げて再導入するのも妥協の一案ではないか。

 暫定税率の失効により、二兆六千億円に及ぶ財源不足の問題が生じている。石川県では 県税分と国からの補助金合わせて百二十七億円、富山県では同じく百四十七億円の減収になり、地方財政への負担も大きい。野党側が暫定税率の即時撤廃を強く求めていたのに対し、政府・与党が「野党の要求は無責任」と批判してきた理由もここにある。

 ただ、暫定税率の失効後もガソリンには一リットルあたり二十四・三円の揮発油税がか かっている。ここに暫定税率を復活させたら、本則税率を倍増することになる。「暫定」を延々三十数年も続け、無駄としか思えない支出が相次いで露見した問題の反省もなしに、ただ単に元に戻せというのでは、大方の国民は納得しないだろう。

 かといって、暫定税率を失効させたままでは、財源不足はいかんともし難い。当面は、 特別会計のなかの「埋蔵金」を充てる手もあろうが、いつまでも続けられないだろう。やはり国民に説明可能なかたちで、これまでの暫定税率より少ない税率を本則に上乗せするような仕組みを考えるのが一番良いのではないか。

◎タクシー運賃改定 サービス競争を促したい

 石川県内でタクシー初乗り運賃の上限が引き上げられ、各社の判断による値上げや現状 維持などで運賃差が広がることは、業界の競争を促すという点では好ましいことだろう。値上げする会社では客離れを懸念し、接客向上策や配車システム改善などに動き出したが、そうしたサービス競争は歓迎である。

 高齢化の進展で「生活の足」としてタクシーは欠かせず、北陸新幹線開業へ向け、バス とともに地域の二次交通としての役割も高まるはずである。タクシーは流し営業など業務の特殊性から料金やサービスを自由に選びにくく、市場原理が反映されにくいと言われるが、だからといって「同一地域・同一運賃」に近い状況では業界は活性化しにくい。タクシーを魅力ある交通機関とするためにも、懸命に経営努力する会社が伸び、そうでないところは退場を迫られるような環境整備も必要だろう。

 北陸信越運輸局は金沢中心の「金沢交通圏」と、それ以外の県全域を対象とする「石川 地区」で運賃賃上げを認可し、四日から新運賃に移行する。初乗りは一割程度アップとなり、金沢では値上げしない会社との差は百三十円に拡大する。他県では値上げ後、利用者が減少した例もみられるだけに、運賃にふさわしいサービスが求められるのは言うまでもない。

 金沢交通圏では値上げ申請から値下げへ動き、それも撤回するという異例の展開をたど った。競争の激しさを物語っているとも言えるが、値上げでタクシーの供給過剰が解消されるわけではない。

 二〇〇二年のタクシー規制緩和で需要が伸びないまま台数だけが増えた。それが業界の 構造的な問題であり、総収入確保へ車の稼働率を上げ、乗務員が過重労働を強いられる悪循環も生じている。それを断ち切るには全体の需要を掘り起こすか、淘汰を通じて供給過剰を改善するしかないだろう。

 富山市では値上げが認められる一方、国の「特定特別監視地域」に指定され、増車が制 限された。だが、台数増加に上からふたをする場当たり的な対応だけでは問題の根本的な解決にはなりにくい。


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