【社説】警察は無能なのか、やる気がないのか

　3月26日午後3時44分、京畿道高陽市。カバンを持った小学3年生の女の子が学校から帰宅するため、自宅のあるマンションのエレベーターに乗った。その後について帽子を被った男がエレベーターの中に入り込み、「黙ってついて来い」と脅しながら子どもの手を引いて連れ出そうとした。女の子が抵抗すると、男はポケットから黄色いカッターナイフを取り出し、右足でボールでも蹴るかのように女の子の体を6回も蹴り、また顔を殴った。その間にエレベーターが3階で止まりドアが開くと、男は女の子の髪の毛をつかんで引きずり出した。女の子はエレベーターの手すりをつかみながら抵抗し、床に倒れこんだ状態で引きずり出された。片方の靴が脱げ、エレベーターのドアが閉じられた。

　30日夜にSBSで放映されたこの事件映像を見た多くの国民は、まさしくぞっとしたことだろう。真昼に学校から帰宅しようとしていた女の子が、自宅のあるマンションのエレベーターで、屠殺場に引かれる獣のように殴られながら拉致されることがあるとするなら、一体この国に安全な場所はあるのだろうか。1階に住む女子大生が「助けて！」という悲鳴を聞いて3階に駆けつけていなければ、この女の子は安養で誘拐・殺害されたヘジンちゃん、イェスルちゃんと同じ運命を辿っていたかも知れないのだ。

　事件直後に届けを受けて現場に向かった警察官二人は、この映像を見てもそのまま署に戻り、翌日になって一山警察署に「単純暴行事件」として報告した。あらかじめ準備していたカッターナイフを取り出して、脅迫しながら激しく暴行し、髪の毛をつかんで引きずり出そうとする場面を見ても、「酒に酔った男が暴れたに過ぎない」と判断したというのだ。これは警察官が有能とか無能とか、またやる気があるのかなどを云々する以前に、頭脳の程度から調べる必要があるだろう。

　27日からマンション周辺には、犯人の写真が掲載された100枚以上のビラがあちこちに貼り出された。事件後に警察から何の連絡もなかったことから、女の子の両親が作成して張り出したのだ。27日に事件を担当することになった一山警察署の刑事が現場検証を行ったのは29日だった。28日は非番だったので休んでいたという。一山警察署長が刑事たちを叱咤して捜査本部を設置したのは、30日夜にニュースでこの場面が放送された直後だった。

　警察庁は26日午前11時、「幼児・児童拉致失踪総合対策」を発表した。警察が安養で起きた事件の際、ヘジンちゃん、イェスルちゃんの家のすぐ近所に住んでいた犯人を逮捕したのは、事件から82日も過ぎてからだった。それに対する非難が激しくなったことから取った対策だ。このような対策に動き出してからわずか6時間後、このように全国民が怒りで言葉も出ないような行動を、警察は取っていたのだ。