宙に浮いた年金記録5095万件について社会保険庁が公表した見解が早くも揺らぎ始めている。約4割の2025万件について持ち主の特定困難としているが、与党からも指摘を受け、新たに死亡届が出されている記録など833万件について「未解明」と位置付け直した。民主党はこれまでに統合が済んだ分を除く最大4678万件が未解決だと主張しており、風当たりが強まっている。
社保庁は14日に内訳を発表した際、3070万件の記録について解明済みか、解明が可能と説明していた。この中には、死亡届が出されている記録など341万件と、「未解明記録と同一人物のものと想定される重複記録」492万件の計833万件が、「解明済み」として含まれていた。
ところがその後、341万件に関し、与野党から「本来の年金を受け取らず亡くなった人の記録が含まれているはずだ」「遺族年金の受給権者がいるのではないか」といった指摘が続出。「未解明」に再分類した。さらに、「未解明記録の持ち主を特定できれば自動的に解決する」としていた重複記録492万件についても「解明作業は必要」と見直しを求められ、14日時点で特定困難とした2025万件に加え未解明領域は2858万件に増えた。
それでも社保庁は、ねんきん特別便を送付中の記録も含めた2237万件を広義の「解明済み」と強調することに力点を置き、未解明に再分類した「死亡届」などの341万件についても、26日の衆院厚生労働委員会で「死亡届があれば遺族年金の手続きをするよう通知している。多くは受給権を引き継ぐ遺族がいなかった記録だろう」と強調した。重複記録492万件も、解明作業に着手すれば問題ない、とのスタンスを崩していない。
民主党は、社保庁が未解明とした2858万件に加え、同庁が「死亡一時金や脱退手当金を受給済み」としている648万件に関しても、26日の厚労委で「支給漏れがあるはずだ」(長妻昭政調会長代理)と追及した。民主党は、名寄せを終えねんきん特別便を送った1172万件についても「持ち主は特定できていない」として、「(統合済みの417万件を除く)92%、4678万件は未解決だ」と迫っており、対立が強まっている。【吉田啓志】
毎日新聞 2008年3月27日 東京朝刊