2大巨悪徹底比較!『カレー代行者』ドン・シエル×『狂い咲き国花』黒SAKURA
“永遠の姉さん”凛と、いつ果てるともない抗争を繰り広げたSAKURA


  ベストカップルだったカレーとアルク、狂い咲きと凛

  さて、両者の実績を単純に比較してみると、シエルにあってSAKURAにはない勲章が目に付く。度重なるフィギュア化の栄冠だ。FWFの選手たちは幾度となく立体化を果たしているが、意外にもSAKURAは(桜でなく黒としては)この種の企画に参加していない。
  対して、シエルはフィギュア化の常連であった。セガのプライズ、スプリングDXシリーズ、ソル・インターナショナル版、ALTERトレーディングフィギュア等々。
  ホビーイベントに参加し、新たなグッズを生み出すシエル。あくまでターゲットを凛一本に絞り、キャラ展開をしないSAKURA。その背景に、当時のMWEとFWFが抱える鉄板萌え属性キャラの質と量の差という事情があることは否定できない。単品で客を呼べる真のヤンデレがSAKURAとカレンだけだったFWFとしては、SAKURAを立体物などに“混入”するような、危なっかしい使い方はできなかったのだ。
  だが、それが、およそ人気には目もくれず凛の首だけを狙う“狂妹”SAKURAというイメージを増幅させ、結果的に功を奏した。また、その唯一最大の抗争相手たる凛が、「あらかじめ三十分だけ時間をズラして目覚ましをセットしたんだから、あと三十分は眠れるはず」や、果ては「……やっちゃった事は仕方ない。反省」などといってリーグ戦を棄権してしまう、団体のリーダーにあるまじき言動を平気で取る“うっかり姉”だったからドンピシャ、“相思相愛”の関係となったのである。
  シエルとアルクも、相思相愛ぶりで凛とSAKURAに負けてはいない。当初からヒスイやコハクといった強力なメイドを得て発展したMWEのマットにおいては、シエルとて“萌えのプロレス”の一員となる必要があった。と同時に、彼女ら“メイド一流の強豪”と一線を画し、トップヒールとして異彩を放つことを求められた。
  この難題を、シエルは事も無げにクリアしてしまった。アトラス紫苑以前にも、ルナティック秋葉やマイティさっちんと遺恨戦を展開し、なおかつアルクとの一連の抗争を、それらの戦いの上に位置する、いや比較の対象とならない、まさしく切り札――数限りなく肌を合わせておきながら、いつまでも“とっておき”感が失せない至高のカードとして見事に成立させていた。

どこか似ている気になるアイツは目障りなヨゴレ

とにかく“巨乳天国”と呼ばれた有明の同人誌即売会で荒稼ぎした双璧が、この両雄だろう。民放アニメのトップヒロインが“二次創作”の美名の下、三日間程度“出稼ぎ”して大金を持ち帰る事例は後を絶たなかったが、それとは違い、シエルとSAKURAは型月に居座り、型月を主戦場にしてきたのだ。この時代において、やはりトータルでは、両雄が“型月で最も稼いだ巨乳ヒロイン”となるのは間違いないはずだ。
  そして、何かにつけて比較される両雄は、上がるリングを異にしているにもかかわらず、アルクと凛それぞれのライバルでありMWEとFWFのトップヒールとして、互いを強く意識し合っていた。というより「あんなヤツと私を一緒にしないでください!」とばかりに、比較されることに対して嫌悪感をあからさまに示していた。それは、相手の存在を過剰に意識している裏返しに他ならないのだが――
  ともに巨乳であり、本編中ではメーンストリートを歩いていない、当然人気投票首位も獲得していない。共通点が少なくないだけに、余計に目障りなのだ。そんな両雄が、ついにクロスオーバーしたのが、2007年の『オールアラウンドタイプムーン』だった。
  3年ぶりの復活となるAR砲の対戦チームとして最凶悪コンビを結成した両雄は、やはり“場外乱闘”を繰り広げている。8・17前夜にミーティングを持った際、どちらが食事代を払わされたかという、まったくもって些細なトラブルだ。SAKURAに言わせれば「シエルさんったら、私の食べかけのカレーライスを奪おうとした」。だが、シエルに言わせると「SAKURAさんがカレーを食べ残そうとしたのです」だという。食事に執着が強い、そしてプライドが高いのは、両雄の最大の共通点だろう。

続く
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