1999年の初来日から数えて、今年で5回目の日本ツアーとなる「リバーダンス」。それは現代的なアイリッシュダンスやフラメンコ、バレエ、そして民族楽器による演奏を組み合わせて作られたユニークな作品だ。舞台は、この春新装オープンした赤坂ACTシアター。
完成間もない劇場のエレガントな雰囲気の中、いままでになく近い距離で迫真のパフォーマンスが体感できるに違いない。いままで観(み)る機会のなかったあなたも、大きな会場でしか観たことのないあなたも、今度こそ、このエンターテインメント史に残る名作を見逃さないでほしい。
どうして「リバーダンス」がこんなにも日本人に受けるのか、それが不思議なのです。
来日公演では、昼の部を観た人がそのまま夜の部の当日券売り場に並ぶ、という話を毎回聞きます。初めて観た時から私たちの心にすっと入ってきて、「これだ!」と思わせる、そんな魅力が「リバーダンス」にはあります。
「アイルランドの神話・移民の記憶」というようなものをテーマにしながらも、「リバーダンス」は国籍や民族を超えて世界中で受け入れられています。多い時には世界のどこか3カ所で同時期に公演が行われており、欧米だけではなくアフリカやアジアでも大きな反響を呼んでいます。アイルランド文化に接点のない人にもこれだけ受け入れられるのは、「ローカルなもの(特殊)の底流には、実はグローバルなもの(普遍)が流れている」ということなのかもしれません。
予備知識なんかなくても大丈夫。世界共通言語である音楽とダンスを通じて、ただ素直に楽しめるのが「リバーダンス」です。
「リバーダンス」は、劇場のいすにかしこまって観る作品ではありません。空中で静止しているかのような女性ダンサーの優美さにため息をつき、タップダンスのコミカルな動きに笑いを誘われ、加速するバイオリンソロに手拍子を合わせ、迫力の群舞に熱狂する場なのです。
日本ツアーのステージに立つ総勢40人のダンサーは、みなそれぞれのジャンルで世界レベルの実績を上げてきた実力派。また生演奏を聴かせるミュージシャンも、クラシックやトラッドミュージックの分野において、ソロで通用する粒ぞろいです。
「見巧者」の伝統のある日本人としては、パフォーマンスが決まった瞬間、大きな拍手と歓声で応えてみましょう。客席からいい反応が返ってくることで、さらにすごい技を見せてくれるはずです。安くないチケットを買って観に行くのですから、ステージと交流して積極的に楽しみたいものです。
「リバーダンス」の魅力を語る上で「打撃系ダンスの底力」を欠かすことはできません。オープニングの「太陽を巡るリール」、第1部最後のタイトル曲「リバーダンス」、エンディングの「リバーダンス・インターナショナル」、どれも靴音を大きく鳴らす、アイリッシュダンスによる大迫力の群舞です。
上半身は大きく動かさず、基本的に脚だけで踊るこのダンススタイル。この一見無表情なダンスの生み出すリズムが、体の深いところにぐっと伝わってくるのです。能面にいくつもの表情を感じるように、アイリッシュダンスは深い表情を秘めています。その凛(りん)とした姿勢に、どこかで見失いそうになっていた気高さや潔さを感じて、私たちの心は揺さぶられるのです。
今回の注目ポイントはなんといっても、新しくオープンした赤坂ACTシアターでの公演となることでしょう。
ここ数年の「リバーダンス」は、比較的小さなホールでの、客席との一体感を重視した演出になってきています。その意味では、1300席の赤坂ACTシアターでの上演は、生の靴音が聞こえそうな距離で「リバーダンス」を楽しめるまさに絶好のチャンスだといえます。
文・森 祐二
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