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最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」
脚本・庵野秀明　絵コンテ・摩砂雪/鶴巻和哉/庵野秀明　演出・摩砂雪/鶴巻和哉
テロップ『時に西暦2016年』
　『人々の失われたモノ』
　『すなわち、心の補完は続いていた』
　『だが、その全てを記すには、あまりにも時間が足りない』
　『よって今は、碇シンジという名の少年』
　『彼の心の補完について語ることにする』
テロップ『CASE３』
　『碇シンジの場合』
　『恐怖』
惣流アスカ「自分がいなくなること」
碇シンジ「でも、こんな自分ならいなくてもいいと思う」
綾波レイ「どうして？」
惣流アスカ「だって、私はいらない人間だもの」
碇シンジ「やっぱり僕はいらない子供なんだ。僕のことなんかどうでもいいんだ」
葛城ミサト「どうでもいいと思うことで逃げてるでしょ。失敗するのが怖いんでしょ。人から嫌われるのが 怖いんでしょ。弱い自分を見るのが怖いんでしょ」
碇シンジ「そんなの、ミサトさんも同じじゃないか」
葛城ミサト「そうよ、私たちはみんな同じなのよ」
赤木リツコ「心がどこか欠けているの」
惣流アスカ「それが怖いの」
綾波レイ「不安なの」
葛城ミサト「だから、今ひとつになろうとしている」
惣流アスカ「お互いに埋め合おうとしている」
綾波レイ「それが、補完計画」
冬月コウゾウ「人は群れていなければ生きられない」
碇ゲンドウ「人は一人で生きていけない」
赤木リツコ「自分は一人しかいないのに」
加持リョウジ「だからつらいんだな」
惣流アスカ「だから寂しいのよ」
葛城ミサト「だから心を、体を重ねたいの」
綾波レイ「ひとつになりたいのね」
冬月コウゾウ「人は、もろく弱いものでできている」
赤木リツコ「心も体ももろくて弱いものでできている」
碇ゲンドウ「だから、お互いに補完しあわなければならない」
　「そうしなければ、生きていけないからだ」
テロップ『本当に？』
綾波レイ「なぜ、生きてるの？」
テロップ『わからない』
惣流アスカ「それを知りたくて生きてるのかな？」
綾波レイ「誰の為に生きてるの？」
惣流アスカ「勿論、私の為よ」
碇シンジ「多分、自分の為に」
テロップ『本当に？』
綾波レイ「生きていて嬉しい？」
碇シンジ「わからない」
綾波レイ「生きていて嬉しい？」
惣流アスカ「嬉しいに決まってるわよ」
綾波レイ「生きていて嬉しい？」
葛城ミサト「楽しいことしかしたくないの」
加持リョウジ「寂しいのは、嫌いかい？」
碇シンジ「好きじゃないです」
加持リョウジ「つらいのは、嫌いかい？」
葛城ミサト「好きじゃないわ」
加持リョウジ「だから逃げるのか？」
葛城ミサト「そうよ。嫌なことから逃げ出してなにが悪いっていうのよ」
碇シンジ「逃げちゃ駄目だ」
綾波レイ「どうして逃げてはいけないの？」
碇シンジ「逃げたらつらいんだ」
綾波レイ「つらいことから逃げ出したのに？」
碇シンジ「つらかったんだよ」
惣流アスカ「つらいことがわかってんなら、それでいいじゃん」
葛城ミサト「そう。つらかったら逃げてもいいのよ」
綾波レイ「本当に嫌だったら逃げ出してもいいの」
碇シンジ「でも嫌だ。逃げるのはもう嫌なんだよ」
　「そう、逃げちゃ駄目なんだ」
葛城ミサト「それは、ただ逃げる方がもっとつらいと感じているからよ」
惣流アスカ「逃げ出したつらさを知ったから」
綾波レイ「だから逃げるのが嫌なのね」
碇シンジ「だって逃げ出したら誰も相手にしてくれないんだ。僕を捨てないで。お願いだから僕を捨てない で」
赤木リツコ「人の言うことにおとなしく素直に従う、それがあの子の処世術じゃないの？」
碇シンジ「そうだよ。そうしないとまた捨てられちゃうんだ」
惣流アスカ「自分が傷付くのが怖いんでしょう？」
葛城ミサト「そう思い込んでるだけでしょ？」
相田ケンスケ「傷付いてるのはシンジ一人じゃないよ」
鈴原トウジ「難儀なんはお前一人やないで」
洞木ヒカリ「そう考えると楽だから、そう思っているだけね」
碇シンジ「うるさい、そんなの関係ないよ。僕のことなんかどうでもいいんだ」
葛城ミサト「そうやってすぐに自分の価値を放りだす」
綾波レイ「私には何もないもの」
惣流アスカ「まーた。価値がないんだと思い込む」
葛城ミサト「そう思って何もしなければ、傷付くこともないもの」
惣流アスカ「人に褒められることで自分を維持しているのよ」
碇シンジ「誰も僕を受け入れてくれないんだ」
葛城ミサト「そう思い込んでるだけでしょ」
碇シンジ「だから僕は、エヴァに乗らなきゃいけない」
葛城ミサト「自分には最初から価値がないと思い込んでるだけなんでしょ」
碇シンジ「そうしなきゃいけないんだ」
相田ケンスケ「そんなことないさ」
鈴原トウジ「そう思い込んどるだけやで、きっと」
碇シンジ「違う。僕に価値はない。誇れるものがない」
惣流アスカ「だからエヴァに乗ってる」
碇シンジ「エヴァに乗ることで、僕は僕でいられる」
惣流アスカ「エヴァに乗ることで、私は私でいられる」
碇シンジ「エヴァに乗る前の僕には何もなかった。僕はエヴァに乗っているからここにいられる」
惣流アスカ「他には何もないの」
綾波レイ「他には何もないもの」
碇シンジ「僕には何もない。何もないんだ」
テロップ『生きる価値が』
碇シンジ「僕にはない」
テロップ『…だから』
碇シンジ「僕は僕が嫌いなんだ」
惣流アスカ「あんたなんか嫌い、嫌い、大ッ嫌い」
鈴原トウジ「お前なんかでっ嫌いや」
相田ケンスケ「僕は嫌いだな、君のことが」
洞木ヒカリ「ごめんなさい、あなたのこと嫌いなの」
赤木リツコ「嫌いね」
日向マコト「嫌いですね」
青葉シゲル「嫌いだよ」
伊吹マヤ「嫌いです、あなたのこと」
加持リョウジ「嫌いだな、君のことが」
葛城ミサト「大ッ嫌い」
碇シンジ「ほら、みんなそう思ってる。きっとそう思ってるんだ」
綾波レイ「そう思い込んでるだけでしょ」
碇シンジ「違う。だって僕は僕が嫌いだもの」
綾波レイ「だから、みんなもそうだと思い込んでる」
惣流アスカ「嫌い、嫌い、大ッ嫌い」
碇シンジ「でも、褒めてくれるんだ。エヴァに乗ると褒めてくれるんだ」
　「人に褒められたんだ」
テロップ『だからうれしい』
碇シンジ「人に褒められたんだ」
テロップ『でもうれしくない』
綾波レイ「どちらが本当の気持ちなの？」
碇シンジ「わからない。いや、どっちも本当の気持ちだ」
葛城ミサト「だからエヴァに乗るのね」
碇シンジ「今の僕にはエヴァしかないから」
綾波レイ「そうしないと自分が保てないのね」
葛城ミサト「確かにエヴァ初号機はあなたの心の一部だわ」
赤木リツコ「けど、エヴァにすがっていると、エヴァそのものがあなた自身になってしまう」
加持リョウジ「エヴァそのものが君の全てになってしまう」
葛城ミサト「本当のあなた自身はどこにもいなくなってしまうのよ」
碇シンジ「いいんだ。もともと僕には何にもなかったんだ。習っていたチェロだって何にもならなかったん だ」
惣流アスカ「自分から何もしなかっただけじゃないの」
碇シンジ「でも、今はエヴァに乗れるんだ」
惣流アスカ「で、そのうちエヴァがなければ何もできなくなるのよ。私みたいに」
テロップ『何故、エヴァに乗るのか？』
碇シンジ「それが僕の全てだから」
アイキャッチ「世界の中心でアイを叫んだけもの」
アイキャッチ「Take care of yourself.」
碇シンジ「雨。憂鬱な気分。僕の気分みたいだ。好きじゃない」
綾波レイ「夕日。消えていく命。私の願い。好きじゃない」
惣流アスカ「朝。今日の始まり。嫌な一日の始まり。好きじゃない」
碇シンジ「青い空。暖かいもの。慣れないもの。怖いもの。いらないもの。好きじゃない」
惣流アスカ「みんな、みんな、大ッ嫌い」
葛城ミサト「何を願うの？」
テロップ『不安が怖い？』
惣流アスカ「何が欲しいの？」
テロップ『安らぎが欲しい？』
綾波レイ「何を求めているの？」
テロップ『嫌わないで！』
惣流アスカ「私を嫌わないで」
碇シンジ「怖いものは」
テロップ『拒絶』
綾波レイ「欲しいものは」
テロップ『接触と承認』
碇シンジ「そばにいてもいいの？」
綾波レイ「ここにいてもいいの？」
惣流アスカ「私のこと、好き？」
テロップ『おかあさんのこと、』
　『好き？』
惣流アスカ「ママの所に行きたいの？」
　「行きたくない」
碇シンジ「お父さんの所へ行かないの？」
　「行きたくない」
綾波レイ「どうして？」
テロップ『怖いから』
碇シンジ「…」
　「嫌われるのが怖いから」
惣流アスカ「…」
　「私が消えてしまうかもしれないから」
テロップ『だから？』
葛城ミサト「何を願うの？」
テロップ『不安の解消』
綾波レイ「何を求めるの？」
テロップ『寂しさの解消』
碇ユイ「幸せではないのね」
碇シンジ「その前に欲しいんだ。僕に価値が欲しいんだ。誰も僕を捨てない、大事にしてくれるだけの」
テロップ『価値が欲しい』
碇ユイ「それはあなた自身で認めるしかないわよ、自分の価値を」
テロップ『だから、エヴァに乗っている』
碇シンジ「僕には価値がない」
惣流アスカ「生きていくだけの価値がない」
綾波レイ「では、あなたは何？」
碇シンジ「じゃ、僕って何？僕ってなんなんだ？」
　「これは？」
　「僕だ。僕を他人に見せている形、僕という記号だ」
　「これも、これも」
テロップ『碇シンジ』
碇シンジ「これも、みんな僕を表すものに過ぎない。僕を他人に認識させているものに過ぎない」
　「じゃ、僕ってなんだ？」
テロップ『どこにいるんだ？』
碇シンジ「これは、僕？」
　「ホントの僕」
　「偽りの僕」
綾波レイ「あなたはあなた。ただ、あなた自身の広がりと境い目があるの」
碇シンジ「そうだ。僕の服、僕の靴、僕の部屋。それらが僕の一部」
綾波レイ「あなたの意識で繋がっている、もの」
碇シンジ「僕と感じているものが僕。僕は僕自身でしかないのか？」
　「でも僕がわからない。僕はどこにいるんだ？僕ってなんなんだ？僕ってなんなんだ？」
テロップ『だから心の閉塞を、願う』
碇シンジ「誰も僕のことなんてわかってくれないんだ」
惣流アスカ「あんたバカぁ？そんなのあったり前じゃん。誰もあんたのことなんてわかんないわよ」
葛城ミサト「あなたのことをいたわり、理解できるのはあなた自身しかいないのよ」
綾波レイ「だから、自分を大事にしなさい」
碇シンジ「そんなこと言ったって自分がないんだ、わからないんだ。大事にできるわけないよ」
テロップ『不安なのよ』
綾波レイ「やはり不安なのよ」
葛城ミサト「今のあなた」
惣流アスカ「今のあなたの周りの人々」
綾波レイ「今のあなたを取り巻く環境」
葛城ミサト「どれもずっと永遠に続くものではないわ」
惣流アスカ「あなたの時間は常に流れ」
綾波レイ「あなたの世界は変化の連続でできている。なによりも、あなたの心次第でいつでも変わるものな のよ」
碇シンジ「これは？」
　「何もない世界、誰もいない世界」
　「自由の世界」
　「自由？」
　「なにものにも束縛されない、自由の世界だよ」
　「これが、自由」
　「そ、自由の世界」
綾波レイ「その代わりに何もない」
碇シンジ「僕が考えない限り」
葛城ミサト「そう、あなたが考えない限り」
碇シンジ「そんな、どうしたらいいのかわかんないよ」
綾波レイ「不安なのね」
惣流アスカ「自分のイメージがないのね」
碇シンジ「漠然としすぎてる」
葛城ミサト「何も掴めない世界」
テロップ『それが自由』
加持リョウジ「君の好きにしていい世界」
葛城ミサト「けど、あなたは不安なのね」
冬月コウゾウ「どうしたらいいのかわからないのかね？」
碇シンジ「どうしたらいいんですか？」
碇ゲンドウ「不自由をやろう」
惣流アスカ「ほら、これで天地ができたわ」
綾波レイ「でもこれで自由がひとつ、消えた」
葛城ミサト「あなたは地に立たなければならない」
加持リョウジ「だが、君は安心する」
日向マコト「自分の心が少し楽になったから」
青葉シゲル「そして歩いてみる」
伊吹マヤ「それはあなたの意思」
碇シンジ「これは、僕の意思」
赤木リツコ「世界に地が存在するのは、あなたの周りの世界」
鈴原トウジ「せやけど、お前は自由に動けるんや」
相田ケンスケ「その気になれば、世界の位置を変えることもできるさ」
洞木ヒカリ「そして、世界の位置も常に同じ所ではないの」
加持リョウジ「時の流れと共に変わっていくものさ」
冬月コウゾウ「君自身も変わることができる」
碇ゲンドウ「お前をかたどっているのは、お前自身の心とその周りの世界だからな」
赤木リツコ「だって、これはあなたの世界ですもの」
葛城ミサト「あなたが捉えている、現実の形なのよ」
テロップ『それが現実』
碇シンジ「これは？何もない空間。何もない世界。僕の他には何もない世界。僕がよくわからなくなってい く。自分がなくなっていく感じ。僕という存在が消えていく」
テロップ『何故？』
碇ユイ「ここにはあなたしかいないからよ」
碇シンジ「僕しかいないから？」
碇ユイ「自分以外の存在がないと、あなたは自分の形がわからないからよ」
碇シンジ「自分の形」
テロップ『自分のイメージ？』
葛城ミサト「そう。他の人の形を見ることで、自分の形を知っている」
惣流アスカ「他の人との壁を見ることで、自分の形をイメージしている」
綾波レイ「あなたは他の人がいないと自分が見えないの」
碇シンジ「他の人がいるから自分がいられるんじゃないか。一人はどこまで行っても一人じゃないか」
　「世界はみんな僕だけだ」
葛城ミサト「他人との違いを認識することで、自分をかたどっているのね」
綾波レイ「一番最初の他人は、母親」
惣流アスカ「母親はあなたとは違う人間なのよ」
碇シンジ「そう、僕は僕だ。ただ、他の人たちが僕の心の形を作っているのも確かなんだ」
葛城ミサト「そうよ、碇シンジ君」
惣流アスカ「やっとわかったの？バカシンジ」
碇シンジ「…」
惣流アスカ「ようやくお目覚めね、バカシンジ」
碇シンジ「なんだ、アスカか…」
惣流アスカ「なんだとはなによ。こうして毎朝遅刻しない様に起こしに来てやってるのに。それが幼なじみ に捧げる感謝の言葉？」
碇シンジ「ああ、ありがと。だからもう少し寝かせて…」
惣流アスカ「なにを甘えてんの。もう、さっさと起きなさいよ」
　「…」
　「…あああっ、エッチ、バカ、変態、信じらんない」
碇シンジ「仕方ないだろ、朝なんだから」
碇ユイ「シンジったら。せっかくアスカちゃんが迎えにきてくれてるのにしょうのない子ねえ」
碇ゲンドウ「ああ」
碇ユイ「あなたも、新聞ばかり読んでないでさっさと支度してください」
碇ゲンドウ「ああ」
碇ユイ「もう、いい歳してシンジと変わらないんだから」
碇ゲンドウ「君の支度はいいのか？」
碇ユイ「はいいつでも」
　「もう、会議に遅れて冬月先生にお小言言われるの、私なんですよ」
碇ゲンドウ「君はもてるからなあ」
碇ユイ「馬鹿言ってないでさっさと着替えてください」
碇ゲンドウ「ああ、わかってるよ、ユイ」
惣流アスカ「もう、ほら、さっさとしなさいよ」
碇シンジ「…わかってるよ。ほんとうるさいんだから、アスカは」
惣流アスカ「なんですって？」
　「じゃあおばさま、行ってきまーす」
碇シンジ「行ってきます」
碇ユイ「はい、行ってらっしゃい」
　「ほらもうあなた、いつまで読んでるんですか」
碇ゲンドウ「ああ、わかってるよ、ユイ」
碇シンジ「今日も転校生が来るんだってね」
惣流アスカ「まあね。ここも来年は遷都されて新たな首都になるんですもの、どんどん人は増えていくわよ 」
碇シンジ「そうだね。どんな子かな？かわいい子だったらいいなあ」
惣流アスカ「…」
綾波レイ「…あー遅刻遅刻―。初日から遅刻じゃかなりヤバイって感じだよねー」
碇シンジ「…」
綾波レイ「…ああっ」
碇シンジ「あっ」
　「…」
綾波レイ「たたたたた…あっ？」
　「…ごめんね、マジで急いでたんだ」
碇シンジ「…」
綾波レイ「ホント、ごめんねー」
碇シンジ「…」
惣流アスカ「…」
鈴原トウジ「なあにい？で、見たんか？その女のパンツ」
碇シンジ「別に見たってわけじゃ。チラッとだけ」
鈴原トウジ「かーっ、朝っぱらから運のええやっちゃなあ」
　「いててててっ、いきなりなにすんのや、委員長」
洞木ヒカリ「…鈴原こそ朝っぱらからなにバカなこと言ってんのよ。ほら、さっさと花瓶のお水替えてきて 、週番でしょ」
鈴原トウジ「ほんまうるさいやっちゃなあ」
洞木ヒカリ「なんですって」
碇シンジ「尻に敷かれるタイプだな、トウジって」
惣流アスカ「あんたもでしょ」
碇シンジ「なんで僕が尻に敷かれるタイプなんだよ」
惣流アスカ「なによ、ほんとのこと言ったまでじゃないの」
碇シンジ「どうしてだよ」
惣流アスカ「見たまんまじゃない」
碇シンジ「アスカがいつもそうやってポンポンポンポン言うからだろ」
惣流アスカ「うるさいわね、バカシンジ」
相田ケンスケ「やあ、平和だねえ」
鈴原トウジ「おおっ、ミサト先生や」
　「おおっ、やっぱええなあ、ミサト先生は…」
相田ケンスケ「…」
碇シンジ「…」
洞木ヒカリ「なによ、三バカトリオが。バッカみたい」
惣流アスカ「なによ、三バカトリオが。バッカみたい」
洞木ヒカリ「起立、礼、着席」
葛城ミサト「喜べ男子ー。今日は噂の転校生を紹介する」
綾波レイ「綾波レイです、よろしく」
碇シンジ「ああっ」
綾波レイ「あああんた、今朝のパンツ覗き魔」
惣流アスカ「ちょっと、言い掛かりはやめてよ。あんたがシンジに勝手に見せたんじゃない」
綾波レイ「あんたこそ何？すぐにこの子かばっちゃってさ。何？できてるわけ？二人」
惣流アスカ「…ただの幼なじみよ、うっさいわねー」
洞木ヒカリ「ちょっと授業中よ。静かにしてください」
葛城ミサト「ああ、楽しそうじゃない。私も興味あるわ、続けてちょうだい」
碇シンジ「そうだ、これもひとつの世界。僕の中の可能性。今の僕が僕そのものではない、いろんな僕自身 があり得るんだ」
　「そうだ、エヴァのパイロットではない僕もあり得るんだ」
葛城ミサト「そう思えば、この現実世界も決して悪いもんじゃないわ」
碇シンジ「現実世界は悪くないかもしれない。でも、自分は嫌いだ」
日向マコト「現実を悪く嫌だと捉えているのは君の心だ」
青葉シゲル「現実を真実に置き換えている君の心さ」
伊吹マヤ「現実を見る角度、置き換える場所、これらが少し違うだけで心の中は大きく変わるわ」
加持リョウジ「真実は人の数だけ存在する」
相田ケンスケ「だが、君の真実はひとつだ。狭量な世界観で作られ、自分を守る為に変更された情報、歪め られた真実さ」
鈴原トウジ「ま、人一人が持てる世界観なんてちっぽけなもんや」
洞木ヒカリ「だけど、人はその自分の小さな物差しでしか物事を計れないわ」
惣流アスカ「与えられた他人の真実でしか物事を見ようとしない」
葛城ミサト「晴れの日は気分よく」
綾波レイ「雨の日は憂鬱」
惣流アスカ「と教えられたらそう思い込んでしまう」
赤木リツコ「雨の日だって楽しいことはあるのに」
冬月コウゾウ「受け取り方ひとつでまるで別のものになってしまう脆弱なものだ、人の中の真実とはな」
加持リョウジ「人間の真実なんてその程度のものさ。だからこそより深い真実を知りたくなるんだね」
碇ゲンドウ「ただ、お前は人に好かれることに慣れていないだけだ」
葛城ミサト「だからそうやって人の顔色ばかりうかがう必要なんて、ないのよ」
碇シンジ「でも、みんな僕が嫌いじゃないのかな？」
惣流アスカ「あんたバカぁ？あんたが一人でそう思い込んでるだけじゃないの」
碇シンジ「でも、僕は僕が嫌いなんだ」
綾波レイ「自分が嫌いな人は他人を好きに、信頼するようになれないわ」
碇シンジ「僕は卑怯で、臆病で、ずるくて、弱虫で」
葛城ミサト「自分がわかればやさしくできるでしょ」
碇シンジ「僕は僕が嫌いだ」
　「でも、好きになれるかもしれない」
　「僕はここにいてもいいのかもしれない」
　「そうだ、僕は僕でしかない」
　「僕は僕だ、僕でいたい」
　「僕はここにいたい」
　「僕はここにいてもいいんだ」
葛城ミサト「おめでとう」
惣流アスカ「おめでとう」
綾波レイ「おめでとう」
赤木リツコ「おめでとう」
加持リョウジ「おめでとう」
洞木ヒカリ「おめでとう」
相田ケンスケ「めでたいな」
鈴原トウジ「おめでとさん」
ペンペン「…」
日向マコト「おめでとう」
青葉シゲル「おめでとう」
伊吹マヤ「おめでとう」
冬月コウゾウ「おめでとう」
碇ゲンドウ「おめでとう」
碇ユイ「おめでとう」
碇シンジ「ありがとう」
テロップ『父に、ありがとう』
　『母に、さようなら』
　『そして、全ての子供達に』
　『おめでとう』
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