校長 小泉雅章
北清水の丘にまた春が巡ってまいりました。斜面の梅の花は、確実に桜の花へバトンを渡そうとしております。本日、ご来賓の皆様をはじめ、このように大勢の保護者の皆様をお招きする中で、本校第31回卒業式を挙行できますことは、校長として最高の喜びであり、学校を代表して深く感謝申し上げる次第であります。
私が最後に授与しました卒業生の証書番号は、5038番でした。この五千番台の数字には、本校が保護者の皆様に信頼され、地域の方々に愛されてきた長い歴史と伝統が込められています。私たち教職員は改めてこの数字に責任を強く感じているところであります。
さて卒業生の皆さん、私は今、89名、一人一人に卒業証書をお渡ししました。皆さんの自信に満ちあふれ顔を見て、さすがスーパー6年生だなあと思いました。本当に卒業おめでとう。
スーパー6年生といえば、あなた方は入学から卒業まで、いつの学年もスーパー学年でした。5年生では林間学校や運動会の北清水ソーランを見事にやりきり、また米作りではそのパワーを遺憾なく発揮して、お米の販売までこぎつけました。そのノウハウは梅干づくりに引き継がれ、結果として時計台の完成を見ました。先日の除幕式では日本一の6年生だと思わず叫びました。修学旅行では広島での平和学習、そして秋吉台での思いがけないお家の人からの手紙。皆さんの手紙を読む真剣な眼差しは今でも脳裏に焼き付いてはなれません。また小学校最後の運動会ではフィナーレを飾った組立体操が印象的でした。その中では先生方のパフォーマンスがあってびっくりしましたが、先生方のガッツもさることながら、先生方をそうさせたのは、あなた方の運動会に取り組む6年生としての姿勢や熱気の結果だと私は思いました。
さらに私がいつも感心させられたのは、あなた方のパワーとティームワーク、それに前向きで、まじめな態度でした。そのパワーとティームワークで、まさに北清水をワールドワンダフル小学校にしてくれました。あなた方の活躍の歴史は、時計台と共に学校だけでなく、広く地域の方の心の中にいつまでも残ることでしょう。
先日のお別れ会では、6年生と5年生をはじめとする在校生の心が見事に一つになり、見事に6年生のバトンを5年生に渡してくれました。感動しました。有難う。
さて餞に二つのお話をします。
一つ目は「念ずれば花開く」ということです。皆さんがこれから歩む生活の中で「サッカーや野球の選手になりたい」「ピアニストになりたい」「たとえば自転車で世界一周したい」など、いろいろな夢や願いが生まれてくるでしょう。自分の願いを叶えるのは到底無理だと決してあきらめてはいけません。その思いを大切にし、努力することです。この道しかないと自分の目標に向かって一生懸命努力することが大切です。昔から念ずれば花開くといわれますが、願わないことには何も手にすることはできないのです。
ちなみに今年からニューヨークヤンキース入った松井選手はこのあいだ、テレビのインタビューの中で、夢を叶えるためには、叶えようとする心意気が大事だということを言っていました。心意気というのは盛んな心という意味です。松井選手が言っているのは夢を持つことと、それを叶えようとする盛んな心が大事ですよと言っているのです。念ずれば花開くの念ずるというのは盛んな心、強い心の大切さを言っているのです。どうか皆さんも心の働きを強くして、夢の実現に向かってください。
二つ目は感謝の心をもつということです。相田みつおさんの詩を紹介します。
花を支える枝、
枝を支える幹、
幹を支える根、
根は見えねえんだなあ
生き生きとしたきれいな花を咲かせるために、根は、雨が降ろうが、風が吹こうが、地面に根を張り、養分を幹から枝へ、枝から花へと送り続けます。休むことなく働き続ける根があるからこそ、きれいな花が咲くのです。根の働きは見えませんが、見えないところで一生懸命働いているからこそ花が咲くのです。今日、ここにこうして卒業の栄えある舞台に居るのは、見えないところで育ててくださっているお家の方、兄弟、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚の、また近所の、おじちゃん、おばちゃん、学校の先生方など、根っこの、見えないところで支えてくださった方々のお陰であります。どうか感謝の心を忘れないでください。
また見えないところを見える目、見える心を常に養うようにしてください。それが本当の感謝の心につながるのです。感謝の心は自分を謙虚にし、自分を磨く素になるものです。
餞に、夢とそれを叶えようとする心の話、もう一つは木の根っに関係して、感謝の話をしました。心の隅に残してくれたら、私はたいへんうれしく思います。
さて、5年生の皆さん、今日は5年生の皆さんが在校生の代表として式に参加してくれています。夢と希望を胸にたくましく巣立っていく卒業生の姿が心に刻まれたことでしょう。6年生とは今日でお別れです。学校が急に寂しくなりますが、これからは皆さんが最上級生です。卒業生を見習い、学校の柱になってください。
先日のお別れ会ではスーパー6年生のあとを受けてウルトラ6年生を宣言してくれました。また原の農業委員さんをお招きしてのお米の感謝祭では、米作りのことを4年生に伝え、時計の除幕式では6年生の心を引き継いでくれました。卒業生に勝るとも劣らないウルトラ6年生になると思います。期待しています。
保護者の皆様に、一言ご挨拶申し上げます。
保護者の皆様には、お子さまが義務教育の6年間を無事に終えられ、今日の日を迎えられましたこと、本当に祝着至極に存じます。この間、楽しいことばかりでなく、苦しいことやつらいこともおありだったことと思います。しかしどんなときにも本校に対する深いご理解とご協力を賜りましたことを心よりお礼申し上げます。
ご承知かと思いますが、中国の故事、断腸の想いは、母猿と子猿の物語から取られています。人間が小猿を生け捕りにして船で川を下っていきましたら、母猿が川沿いにずっとついてきた。とうとう力尽きて、死んでしまったんですが、その母猿の腸はずたずたに切れていたというお話です。親の想いというのはそのようなものだと思います。だからこそ今日の喜びが一層大きいのではないでしょうか。これからも苦労のあとの喜びを信じて子育てをしていこうではありませんか。
この6年間、大切なお子様をお預かりして、不行き届きな点も多々あったかと思いますが、今日の日に免じてお許しいただければ、幸いであります。
最後になりましたが、来賓の皆様、長い間、子どもたちを見守ってくださいまして、まことに有難うございました。おかげさまで本校が誇れる子どもたちに成長してくれました。来賓の皆様方の不断のご尽力に対し、深く感謝申し上げますとともに、これからもどうぞよろしくご指導のほどお願い申し上げる次第であります。
さあ、いよいよお別れが近づいてきています。卒業生の皆さんは、これから中学校また上の学校、それから社会へと、人生を歩んで行きます。人生というのは航海によく例えられます。船が嵐の中を進むように、これからの人生においても苦しいことがあると思います。その時は、北清水のスーパー6年生を思い出してください。アルバムを見てください。コンピューターの先生が作ってくださったCDロムを見てください。この仲間とおしゃべりをしてください。そして坂道の時計台を見に来てください。きっときっと勇気が湧いてきて、人生の嵐を乗り切ることができるでしょう。
どうかこれからもこのスーパー6年生スピリットをもち続けて、頑張ってほしいと思います。
皆さんの幸せと活躍を祈って、私の話を終わります。
さようなら