校長 小 泉 雅 章
主催者を代表して一言ご挨拶申し上げます。
本日ここに来賓の皆様をはじめ、このように大勢の方にご参集いただき、本研究大会が開催できますことは主催者として非常に嬉しく、学校を代表して厚く御礼申し上げます。また本日までの研究にあたり、暖かくご指導いただいた専任講師の葛上先生をはじめ大学の先生方、大阪府教育委員会、本市教育委員会の方々、そしてそれぞれの立場でご支援いただいた方々に対し、まずは深く感謝申し上げる次第であります。
『子どもは社会のカナリア』と言われます。社会の急激な変化の中で、息を詰まらせている子ども。時には息苦しさのあまり悲痛な叫び声をあげる子ども。その姿は、あたかもテレビで目にした空気検査に連れ出される、あのカナリアのようです。
近年の急激な社会の変化には、我々おとなでさえも戸惑いを隠しきれません。その中で、子どもたちはさまざまな問題を、社会に対して提起して います。
学校では、いじめや不登校、小1プロブレム、学級崩壊等の問題、家庭や地域では、家庭内暴力やひきこもり、また少年犯罪や非行の低年齢化、凶悪化等、憂慮すべき事柄については枚挙に暇がありません。また無気力、無感動、耐性の弱さ等、生きる上での意欲や力に目を向けても、社会の変化が子どもにもたらせたものは負の要素があまりにも大きく、このままでは事態はより深刻化し、子どもたちの状況はますます厳しいものになります。
『人は人によって人になる』子どもは人(文化)との出会いによって自己を形成していきます。本校の学校評議員である大阪大学教授・池田寛先生は次のように言っておられます。「子どもは外的刺激や情報をそのまま受け取るのではなく、自らのフィルターを通して受け入れている。そしてそのフィルターは自分のそばにいるおとなとの共同作業によって作り上げている。おとなとは、親、教師、近隣や親戚の者、クラブのコーチであったりする。彼らは情報を子どもに伝える際に、自分の価値観や規範意識を意図せずに加味している。それは子どもが物事を判断したり、評価したり、選択したりする際の視点や立場や枠組みを形成する土台を提供しているのである。」(池田寛著[地域の教育改革]解放出版社から)
現代の子どもたちは、人(文化)との出会いが少ないため、『自己理解』や『自己イメージづくり』つまり『自分づくり』が弱いと言えないだろうか、積極的に人との出会いをすることによって存在感、自己効力感、自己肯定感をもった『自分づくり』ができないか、本校が取り組んだ『地域人材を教育課程にどう生かすか』の研究・実践は正にここに立脚しています。
昨年度、創立30周年記念行事で『心のふるさと北清水』を校区全体で確認しました。大阪大学助教授・渥美公秀先生の「みんなが参加する学校づくりは、実は地域づくりをしているのですよ。」という講演会でのお話にも勇気づけられました。
これからも『参観から参加、分業から協働へ』の方向性を持ち、「さあ、学校へ行こう」を合言葉に、この研究・実践をもっと確かなものにしていきたいと考えています。またこの研究・実践が、カナリアたちの悲痛な叫びに少しでも応えることになると信じています。
そして多くの地域、保護者の方に関わっていただいた子どもたちは、自分自身がおとなになったとき、豊かな自分づくりになったこの体験を、『文化』として次の世代に伝えてくれるものと確信しています。
結びに、本研究大会にて頂戴した貴重なご示唆、ご指導を糧に「地域の学校」「心のふるさと北清水」づくりに教職員一同、一層の努力をすることを心新たに決意することをお誓いいたしまして、ご挨拶とさせていただきます。