現在位置:asahi.com>天声人語 天声人語2008年03月31日(月曜日)付
「あ」とか「お」とか、小さな声を発して読み始めた方もおられよう。紙面一新に合わせ、小欄もご覧の通りの変わりようである。パソコンや携帯電話で横書きを追うネット読者の方は図書館などでご確認いただきたい▼天声人語が全国通しのコラムとなったのは、終戦間もない1945(昭和20)年の9月。以来、この面に平たく寝そべり、森羅万象を書き継いできた。きょうから太めになる▼一行の字数が増えて、心持ち文はゆったりと、おもむろに底で弾んで次の行へと進む。足の立たないプールで覚える戸惑いと、しばらく泳いでみての解放感を思い出す。全体の分量も6字増えた。うれしいなあ、と書けば消える字数ではあるが、限られた紙幅ゆえにありがたい▼さて、限られた年度末の日々は増えもせず、3月が尽きる。パン、しょうゆ、食用油、牛乳と、必需品を選び抜いたように深まる値上げの春。いつまでとも知れぬガソリン値下げは、客と店を浮足立たせるだけだろう。あてになるのは北へ急ぐ桜前線ぐらいか▼年金不信、日銀総裁、道路財源。「未決」の山を傍らに、私たちが選んだ政治はねじれ国会の深いプールでおぼれかけている。福田首相も小沢代表も一代の見せ場に居ながら、国を導く熱と技はありやなしや▼頼れぬ国政を前に、漏れるのは「ああ」のため息ばかり。たまには「おお」とうなりたい。沈滞は党派を超えた動きを生むかもしれない。熱と技を備えた本物はどれか、今度こそ見定めよう。そんな千秋の思いを、新装の箱の隅で新たにする。 PR情報 |
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