離婚へのカウントダウン。[5]
テーマ:回想「ごめん…」
聞こえるか聞こえないか…そんな声。
僕は何がごめんなのかも理解できない状態だった。
ただ。ただキスをした。って事だけはきちんと認識してて。
まーなとは全く違う感触・感覚の口づけ。
もうとにかく大パニックで。呆然としてるしかなくって。
気がつけば力強く僕を抱きしめる彼。
「痛…ぃ」
思わず口に出た言葉。
ハッとした様に僕から離れる彼。凄く焦ってた。
「嫌だった…?」
なんにも答えられない。
我に返りはじめた僕は急に恥かしくなって…。
ぜんぜん相手を見れない。上手く喋れない。
自然と目線は海の方へ…とにかく落ち着こおって思った。
何が起きたのかってゆうより、、何をしてしまったのか…。
「やっぱ、おかしいと思うよ…女と女って…………」
僕は、一瞬固まった。
「同性愛を否定するつもりはないけど…やっぱり不健全っていうかさ…」
僕とまーなは同性愛じゃない!!心の中でとっさにそう思った僕だけど…
ある意味、、そこを目指してる僕とまーなであるだけに…言い返せなかった。
なんだろ…彼から仕掛けたキスのはずなのに…
まるで僕がいけない事をしたような錯覚に囚われた感じだった。
「帰る…。」
僕が精一杯、口にできた言葉だった。
でも、、その言葉をかき消すように彼は大きな声で、、、
「思いきって俺とエッチしてみない?!」
「つーかさ、俺、オマエの事を抱きてーって思ってる!!!」
怖かった。勢いが。彼の真剣な顔が。すごく。
戸惑うとかそんなんじゃなくて怖かった。
この瞬間、自分が女性として見られ扱われる事を本当に実感した。
性転換をしているとはゆっても…心は男。
どんなにまーなの意向に沿って女の子の訓練をしてても…心は男。
日常的に女性として生活をして慣れはじめてても…心は男。
女性として扱われる実感の反面、、、
自分の性認識は男を自覚した瞬間という事でもあったんだよね。。。
何か凄くせつなくなって…涙がポロポロしはじめちゃって…。
まーなに会いたい。
まーなに会いたい。
まーなに会いたい。
それだけになった.。頭んなか。もう怖いとかじゃなくて…まーなに会いたくて。
助けてって。
情けないよね。情けないけど…僕の中では会いたいで一杯になっちゃって。
ボロボロ泣いてるわけじゃなかったけど…涙は止まらなくて。
つぎつぎと頬を伝ってくる。
目の前に広がる大きな海がにじんで見えてて。
「とりあえず、車もどろ?」
急にすっごく優しい声で彼が助手席のドアを開けてくれた。
僕は無言のまま車にのった。
でも…彼はなかなか車に乗ってこない。
ふと見ると海を眺めてる。タバコ吸いながら。缶コーヒー飲みながら。
すっごく考えてる風でもあり…すっごく悩んでる風でもあり…。
僕の視界に映る彼。間違いなく男性。
でも…不思議と別の人間に思えた。
ついさっき自分を男性として自覚したばかりなのに…彼とは違う。
何か上手く表現できないけど…自分とは全く違う人間。そう思えた。
じゃぁ…僕ってなに?なんなの?男?女?どんな人間なの?
なんかどんどん混乱してく自分がいた。
よく考えてみればすごく複雑な状態。
まーなへの愛を第一に考えて突っ走ってきた僕。
自分のしてる事の意味を改めて考えさせられてた。
元々は普通に男の子だった僕。
幼馴染の女の子を好きになって。付き合って。プロポーズした。
だけど、彼女はレズビアンで。僕が女の子になる事を望んだ。
結果…僕は女の子になる決意をして性転換を…。
女の子としてのカラダ。装い。仕草。言葉。
完全に女の子同士の恋愛をしながらの結婚生活。
そして…男性から具体的なアプローチを女性として受けてる僕。
一体何者??僕って一体なんなんだ???
たくさんのクエッションマーク。もちろん、すぐに答えなんかでなくて。
そうこうしているうちに彼が車に戻ってきた。