血糖値の調整に重要な役割を果たすインスリンが、アンチエイジング(抗加齢)治療の土台となる可能性のあることが、線虫を用いた研究で明らかになった。線虫のインスリンレベルを調整することによって、通常2週間の線虫の寿命が約1週間延長することが判明。この延長はヒトに換算すれば相当大きなものになると、研究者の米ハーバード大学医学部ジョスリンJoslin糖尿病センター(ボストン)のT. Keith Blackwell博士は述べている。
インスリンは、健康なヒトの血糖値を調節するとともに、糖尿病患者のさまざまな障害に関連するホルモンとしてよく知られている。Blackwell氏によると、インスリンにはこれ以外にも、細胞によるエネルギー産生を調節するはたらきや、細胞に指示を送りブドウ糖の処理を促す作用、腫瘍の成長を抑える作用などがある。
医学誌「Cell」の3月21日号に掲載された今回の研究では、分子レベルの研究でよく用いられるCaenorhabditis elegans(セノラブディティス・エレガンス)という線虫の一種を用いて、インスリンレベルの変動による影響を調べた。この線虫は最先端の遺伝子研究に長年利用されているもので、2003年のスペースシャトル事故から生還したことでも知られる。研究グループは、インスリンが増大するとSKN-1と呼ばれる遺伝子制御蛋白(たんぱく)の活性が低下することを突き止め、インスリンレベルを下げることによってSKN-1のレベルを上げ、線虫の寿命を延ばすことに成功したという。
「ヒトの体は、生きているだけで自らの細胞に傷害を引き起こすフリーラジカル(活性酸素)を作り出している。身体には傷害から身を守るための独自の抗酸化システムが備わっており、われわれは、このシステムの活性を高めることにより動物の寿命を延ばすことができた」とBlackwell氏は説明している。過去の研究では、インスリンがFOXOという別の蛋白の活性も制御することが明らかになっている。
インスリンが産生されない1型糖尿病患者、産生が十分でない2型糖尿病患者に対する潜在的効果はまだ明確ではない。Blackwell氏は「この研究がさまざまな疾患をもつ患者に希望を抱かせるもの」との考えを示すとともに、「慢性疾患から身を守り、寿命を延ばすことができる治療面での多くの有力な可能性を秘めている」と述べている。
原文
[2008年3月20日/HealthDay News]
Copyright (c)2008 ScoutNews, LLC. All rights reserved.