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新生児医療 長期入院児への支援を

3月31日(月)

 新生児集中治療室(NICU)は、小さく生まれたり、重い病気を抱える赤ちゃんが育つ場所である。急性期を過ぎれば退院するが、中には長期にわたって入院せざるをえない子もいる。自宅や地域の病院に戻るには、環境が十分整っていないからだ。

 妊婦の救急受け入れが難しいのは、NICUの多くが満床状態であるのが一因だとして、長期に入院している子どもへの対応に、国がようやく目を向けた。県も担当者の会議を開き、実態調査などを行ったところだ。

 生まれてきた子どもと家族が安心して暮らせるように、医療や福祉の連携を考えたい。

 早産の妊婦など産科救急を受け入れるには、母体だけでなく生まれてくる赤ちゃんのベッドも必要だ。厚生労働省の調査によると、全国の総合周産期母子医療センターが妊婦や新生児の受け入れを断った理由の半数以上は、NICU満床だった。

 早産や多胎で小さく生まれた赤ちゃんは、入院期間が長くなる。重い障害があり人工呼吸器など手厚いケアが必要な子もいる。このまま長期入院児が増え満床状態が続けば、産科救急の受け入れはより難しくなる。新生児の死亡率が悪化しないか、心配になる。

 何よりも子どもが育つ環境を考えれば、できる限り自宅や近くの病院で過ごせる方がいい。

 そのためにはまず、地域の中核病院で受け入れる態勢をつくることだ。長期にわたり手厚いケアができるよう、人員配置や診療報酬の見直しは必要だろう。

 県内では県立こども病院(安曇野市)と地域の中核病院が研修や情報交換を深めている。何時間もかけて家族が病院に通う負担を、なるべく早く軽減させたい。

 自宅に戻れるようにするには、訪問看護の充実も急務だ。子どもの人工呼吸器や経管栄養の管理などにも対応できるよう、レベルアップが求められる。

 重い障害のある子どもを受け入れる学校や施設も拡充する必要がある。地域の保健、福祉、教育の担当者が連携し、その子に必要なサービスを整える態勢が欠かせない。手厚い支援が必要な赤ちゃんの子育てを、家族だけに背負わせてはいけない。

 大事なのはその子にとって、最良の場を見つけることだ。NICUのベッドを確保するため、退院を迫るようなことは本末転倒である。高度医療で子どもが助かっても、「行き場がない」と親が苦しむようではいけない。