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2008年3月31日

◎新幹線延伸論議 09年度予算へ仕切り直し

 北陸など整備新幹線の建設計画見直しで、政府・与党は当初の目標だった年度内決着を 断念したが、延伸のための財源論議の難航は大方の予想した通りであり、「結論先送り」は想定の範囲内とも言える。期限を区切って集中的に協議したことによって、課題もはっきりしてきた。ここはいったん仕切り直し、二〇〇九年度政府予算編成での新規着工費計上を目指して、腰を据えて議論し直してもらいたい。

 年明け以降の延伸論議で、あらためて大きな課題として浮かび上がったのは、政府・与 党が有力な財源案と考えている新幹線の貸付料、つまりJRが国に支払う新幹線施設使用料の前倒し活用に対して、JRの抵抗感が非常に強いことである。民間企業であるJRが、開業までまだ間がある区間の貸付料を事前算定して不利益を被るのは避けたいと考えるのも分からないではない。「株主に説明できない」という主張にも一理はある。

 ただ、JRには、株主ばかりではなく、新幹線の完成を待つ沿線にも目を向けてもらい たいのである。新幹線の整備に協力することは、沿線地域の経済浮揚に貢献することと同義であり、それはJRの業績にも好影響をもたらすはずだ。前向きに延伸論議に参加する姿勢を見せてほしい。新幹線が早く開業すればそれだけ早く収益が得られることを考えれば、延伸はJRにとっても損な話ではあるまい。政府・与党は、今後もJRを議論に巻き込む努力を粘り強く続けてほしい。

 新規着工区間や完成時期について言えば、「選択と集中」は当然あってしかるべきであ り、今後は区間を絞り込んで優先的に予算を配分し、早く効果を出すことも考えなければならない。新幹線の延伸論議では、とかく「横並び論」や路線ごとの対抗意識が表に出がちだが、もはやそんな時代ではないことを認識してほしい。北陸では、新規着工区間を金沢―福井に絞り、できる限り早く完成させることも本気で検討する必要があろう。

 その発想を基本に据えれば、最優先で取り組むべきなのは言うまでもなく既着工区間の 早期整備、北陸では長野―金沢の建設促進であることもあらためて指摘しておきたい。

◎暫定税率期限切れ 税収不足に「埋蔵金」も

 福田康夫首相の新提案も実を結ばず、揮発油(ガソリン)税の暫定税率期限切れが不可 避の情勢になってきた。首相が提案した道路特定財源の完全一般財源化は、戦後税制の歴史的転換であり、小泉純一郎元首相にもできなかった抜本改革である。私たちはこの大きな一歩をたたき台にして与野党が協議し、「大胆な妥協」の成立を期待したが、特に民主党の側に歩み寄りの気配が見られないのは残念というほかない。

 暫定税率の即時廃止は無理という福田首相の言い分は、もっともな面が多い。即時廃止 を主張する小沢一郎民主党代表は、税収不足について「補助金は全部一括まとめて自主財源として地方に交付する」と言うだけで、真正面から答えなかった。その理由の一つは、二兆六千億円分の税収不足を補う方法が見つからないためだろうが、一年程度であれば、特別会計の余剰資金、いわゆる「埋蔵金」を活用する手もある。

 税収不足を解消する案を具体的に示した上で、与党との修正協議を開始し、揮発油税に 代わる地球環境税などといった新たな税の仕組みを考えるところまで踏み込んでほしい。そうしないと、暫定税率の期限切れに追い込むまではよかったが、税収不足を補うために今度は消費税を引き上げる、などというばかげた話にならぬとも限らない。

 町村信孝官房長官は暫定税率の期限切れでガソリン価格がいったん安くなったとしても 、憲法の「六十日ルール」を使える四月末に、再び引き上げる方針を示した。民主党は「ガソリン値下げ」を実現させれば、国民の支持が集まり、ガソリンを再び引き上げようとする福田政権に批判が集まると読んでいるようだが、果たして思惑通りに行くだろうか。政局を優先し、国民生活を混乱させた責任は、むしろ民主党の側にあると考える国民は少なくないはずだ。

 民主党が真に暫定税率の廃止と一般財源化を求めるなら、福田政権と正面から向き合い 、与党と政策協議をすべきだ。そうでなければ、福田首相は孤立して、新提案はたなざらしになり、「道路族」を喜ばせる結果に終わるだろう。一般財源化に道筋をつける好機を逃してしまうのは惜しい気がする。


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