「ミスが出た方が負ける。エラーが…」
改装なった阪神甲子園球場のバックネット裏でのことです。今月26日、第80回記念センバツの大会第5日第1試合で登場した敦賀気比と天理(奈良)の試合は四回まで0-0。応援に駆けつけていた私は、県高野連の田行和好理事長の言葉にうなずきました。ところが、この「予言」の直後の五回、試合中、唯一のエラーをきっかけに敦賀気比が3点を先制されたのですから、恐ろしいものです。その後も、粘ったものの1-5で敗退。選手の「春」と、私の「最後の仕事」も終わりました。
春は別れと出会いの季節。官公庁や企業の人事異動も次々と内示されました。私も丸3年の福井赴任を終え、4月1日から毎日文化センター広島の館長に転任します。3年間、取材や事業でお世話になり、支えていただいた方々にまずこの場でお礼を申し上げたいと思います。
「桃栗三年柿八年」といいますが、この3年間、「手紙」欄を含めて、読者の皆さんの期待にどこまで応えられる紙面ができたか、と自問自答します。転任のあいさつ回りの中の幾つかをご紹介させていただき、私からの「手紙」を終えたいと思います。
県庁に西川一誠知事を訪ねた時のことです。広島への転任を伝えると、「私も40年ほど前、(自治省から)広島に赴任し、赴任日が8・6の前の8月5日だったのを思い出します」と懐かしそうに切り出されました。「縁」というのはあちこちで転がっているようです。「福井を去るにあたって何か言っておきたいことはありますか」と聞かれたので、「自殺とごみ」と答えました。「東尋坊の自殺、敦賀の廃棄物最終処分場の問題は、“負”の問題ですが、それを転じてプラスに持っていこうというバイタリティーがほしい。自殺防止の先進県を目指すとか、香川県・豊島(てしま)がしているように、住民がごみ問題を後世に残す教訓としての施設整備や、桜を植えるなどの運動をするとか。福井は食を中心に豊かな県ですが、そのエネルギー、欲を県職員をはじめ、県民に持ってもらえたら」と続けると、深くうなずいておられました。
「ご近所のお医者さん」の企画でご協力いただいている、福井県保険医協会の辻哲雄会長からは「(転勤で)がっかりやなあ」と言われた後、「でもいい企画になったね」と喜んでいただけました。
そして、「マスコミとして、あるテレビ番組であったような、医者と患者を離反させるようなことがないようにしてほしい」と要請されました。また、「この連載をしてきた医師たちは、命にかかわる仕事をしているという自負で勉強し、頑張っている。先端医療を否定するつもりはないが、そうした地道な取り組みがもっと評価されていい」「厚生労働省は病院を管理統制することばかり考えて、電子化を進め、規制も強めているが、医師の負担を増やすばかり」と嘆いておられました。地域医療の大切さ。私がこの企画から学んだものです。引き続き、いい企画にしていってほしいと感じました。
えちぜんがに、魚などの食と、うまい酒を楽しませていただきました。その良さが県外には意外と知られていないというのはもはや「常識」ですが、私もささやかな「福井応援団」の1人になれればと思っています。
後任は、大阪本社代表室から新土居仁昌が参ります。また、私と一緒に3年間、敦賀駐在を務めた平野光芳記者が大阪本社社会部へ転任、後任には松江支局から酒造唯記者が赴任します。お世話になりました。平野記者のあいさつです。【福井支局長・蓮見新也】
敦賀を拠点に3年間、原発や行政の取材を担当し、かけがえのない出会いに恵まれました。わずかの間でしたが、敦賀市民、福井県民でいられたことをとても誇りに思っています。大阪からホットでクールなニュースを発信して、元気の便りに代えたいと思います。本当にありがとうございました。
毎日新聞 2008年3月30日 地方版