一九一七年は日本の国産アニメ元年といわれる。その年に劇場公開されたフィルムのうちの一本が初めて見つかったと、東京国立近代美術館フィルムセンターが発表した。
「なまくら刀(塙凹内(はなわへこない)名刀之巻(めいとうのまき))」で、岡山県出身の漫画家幸内(こううち)純一(一八八六〜一九七〇年)が制作した。幸内は上京して、雑誌や新聞で漫画を描いていたところ、映画会社から依頼されて、見よう見まねで作ったようだ。
当時の映画雑誌で、絵の動きの巧みさなど「出色の出来栄え」と評価されたが、ストーリーなどの内容はほとんど伝えられていなかった(津堅信之著「日本アニメーションの力」)。
フィルムは骨董(こっとう)市で見つかり、最新のデジタル技術で復元された。切れの悪い刀をだまされて買った武士の約二分間のコミカルな話という。四月二十四日から同センターで開かれる「発掘された映画たち2008」で公開される。
三年前の東京国際アニメフェアで、幸内は「日本のアニメをつくった二十人」に選ばれ、特別功労賞を贈られることになった。しかし、親族らが見つからず、いまだに表彰状の受け取り手がいない。
手掛けた作品が実に九十一年ぶりによみがえった。ゆかりのある岡山に、国産アニメの先駆者の足跡を伝える手がかりが、何かないのだろうか。